社説「住宅新報の提言」

「重説」の在り方を見直せ

管理を買うマンション 
 一般に「マンションは管理を買え」と言われる。
 しかし、契約前に行われる重要事項説明ではじめて、買う物件に滞納管理費があることを知らされたのでは、買い手は困惑してしまう。
 契約前の重要事項説明で、購入予定物件に滞納管理費があることがわかったら、買い手は、売主に払ってもらうか、その分値引きしてもらって管理費用にあてるか、買うこと自体を断念することになるだろう。
 しかし、せっかく買う気分になっているのに、買い手が水をさされた気分になるのは確かである。

主要事項は事前告知を
 買い手が判断材料を与えられて、考えたり調べたり、意見を聴いたりすることができるようにするには、どうしたらいいだろうか。
 重要事項説明書の主要部分のあらましを、契約の数日前に渡すことを不動産業者に義務付けてみることはどうだろうか。
 重要事項説明書の全体を契約の数日前に交付することには問題がある。その段階で契約に至らずに破談になると、不動産業者は落胆するだけでなく、事務量の増大とその費用の回収に悩まなくてはならなくなる。また、重要事項説明書を渡してからの数日間、契約ができなくなると、ビジネスチャンスの喪失を招きかねないからだ。
 かといって、滞納管理費のような重要な事項を、契約の直前になって初めて知らされると、買い手は混乱してしまうだろう。
 契約直前の重要事項説明で、滞納管理費があることがわかって、契約に至らなかったケースは現実に起こっている。
 競売物件では、滞納管理費が多いと落札はかなり難しいと言われていることからも、滞納管理費のあるなしは購入意思にダイレクトに影響するものだ。

購入動機の確認必要
 当該マンション物件を買うか買わないかに直結するような、つまり取引の成否にかかわる重大な事項の概要は、重要事項説明書の交付に先行して、契約の数日前に取引の当事者に告知する必要があるだろう。
 そのためにも購入者の購入動機の確認を、取引を媒介する不動産業者がチェックしておく必要がある。
 取引の成否にかかわる重要な事項は滞納管理費のようにほとんどの買い手にあてはまる事項もあれば、購入予定者の個別の事情があることも当然考えられる。

数日前をルール化
 共通する重要な事項と購入動機から考えて、その購入者にとっては、特に重要な個別事項について、契約の数日前に、その概要を不動産業者が示すことをルール化してはどうだろうか。
 重要事項説明書の本体の交付と説明はこれまで通り、契約の前までにすればよいこととする。
 こうすることで、買い手は購入動機にかかわる重要な事項をあらかじめ知ることができる。不動産業者は、「そんな大事なことを聴かされていなかった」という買い手からのクレームを避けることができるだろう。