「住宅新報社」新刊図書 著者に聞く!ここがポイント

新刊図書 著者インタビュー『大手不動産会社のプロが教える 中古住宅の買い方・売り方』

喜多 信行(きた のぶゆき)

ファイナンシャルプランナー,不動産コンサルティングマスター,宅地建物取引士

1955年東京都新宿区生まれ。 早稲田大学法学部卒業後、1979年大手不動産流通会社に入社。
新築営業、法人仲介営業、個人仲介営業などを経て今日に至る。
既存住宅市場のより一層の整備と発展を志しながら、日々の業務に従事している。
著書に『不動産業 独立・開業と実務ハンドブック』(小社刊)がある。

Q1 本書の初版本である『これだけは覚えておきたい!中古住宅の売買』(2010年4月刊行)から約4年が経ちましたが、中古住宅売買市場は、どのように変わってきたとお考えですか?

喜多 信行(以下 喜多) 住宅の購入=新築住宅という時代がずっと続いてきたなかで、新築と中古の両方を検討してから購入物件を決めるという顧客の行動が、当たり前に行われてきているのが、ここ数年の大きな変化と感じます。私が初めて中古住宅を買おうというテーマで本を書いたのが10年程前ですが、当時は中古住宅を検討する方は少数派でした。古いものを買うということ自体が、どちらかというと敬遠されていました。

最近は、住宅の本当の質を考えてから買うという消費者行動が、従来の日本人の新しいもの好き・清潔好きという国民性より優先されてきたのではないかと思います。中古住宅の本当の良さが理解され受け入れられたことは、私としても大きな喜びです。

 

Q2 大手不動産会社にお勤めですが、そもそも中古住宅にご興味を持たれたきっかけは何ですか?

喜多 不動産流通業界に就職した30年程前から、中古住宅に興味がありました。初めは新築住宅を担当していたのですが、当時はニュータウンがどんどん開発されていた時期でしたが、既成市街地では当然中古住宅が売買されていました。いい中古住宅もたくさんあるのに、新築市場に比べると不透明感だらけで、これでは消費者に受け入れ難いと思っていました。人に例えるなら、健康状況がはっきりせず、どこかに病気があるかもしれないといった感じです。一方、欧米では中古住宅を中心に売買がされていることを聞いていましたので、日本でも早々に変化が来ると思っていました。

 

Q3 ご自身の経験から、中古住宅を買うメリット・デメリットを教えてください。

喜多 本書の第1章「既存住宅の魅力」に中古住宅のメリットを書きましたが、やはり価格の優位性が一番です。同じ予算で、新築に比べると近いところや上質なものが買えるということで、お得感があります。以前は、中古住宅はローン条件などが不利といったハンディがありましたが、今ではほとんど差がなくなっています。この他にも、実物を見てから購入を決められる、好みの街を選べる等いくつもの魅力があることを本書に書きましたので、ご一読いただければと思います。

一方、デメリットですが、完成した物件のため主に目視という方法でしか物件そのものや劣化の状況を把握することができないことです。これは一般の方には難しいため、インスペクターという専門家もいます。国でも制度を作り、物件を調査したうえで、不具合が発生した時に保証するものもあります。

 

Q4 ズバリ、どんな中古住宅がおすすめですか?

喜多 人によって住まい方や価値観が異なっているので、一言で言うのは、とても難しいですね。今までも多くの方々の住宅選びに関わってきましたが、その方のニーズや今までの住まい方を把握した上でアドバイスしてきました。

ただ、感覚的な言い方になってしまいますが、初めて見たときにピンと来た物件は、「買う・買わない」を別にして覚えておいたほうが、その後の検討に役立つことがあるかと思います。

 

Q5 ご自身の中古住宅の売買の際に、印象に残った㊙エピソードがあれば、教えてください。

喜多 以前は中古一戸建に住んでいたのですが、家族の人数のわりに大きな家でした。このせいでもないのですが、今の小さめの中古マンションに引っ越すときに不用品処分が大変で、予想をはるかに上回る手間とコストがかかりました。家具や園芸用品から衣料品・思い出の品々などなど、無駄な物のオンパレードにはビックリ。でも、今の家では少ない物でも快適に過ごせています。

 

Q6 中古住宅をこれから買おうとしている方々へ、ひとことアドバイスをお願いします。

喜多 中古住宅の購入は、基本的に先着順での購入になるため、決断にスピード感が求められます。焦って買う必要は全くないのですが、決断するための知識や情報がないと決断ができず、いい物件を逃しかねません。つまり、日頃から情報収集に努めることがいい家探しに結びつくと考えます。

 

Q7 最後に、本書のアピールポイントをお願いします。

喜多 私自身、中古住宅の良さを知って中古住宅に住んでいます。この良さを皆様に是非ご理解いただきたいという思いで、本書を書きました。住宅の売買は、多少の知識があるかないかで取引後の満足感が大きく変わってきます。住まいという人生の買い物で最も高いもの、簡単に取り替えることができないものの検討に際して、本書が役に立つと考えています。