アンロック伏見さんのプロフィール
197X年東京都生まれ。大学卒業後、SEとなる。若くしてセミリタイアした投資家の影響を受け、2014年に不動産投資を開始するも、毎月40万円の持ち出しに。その後、経営を立て直し、新たに2棟を購入。2015年に会社員を卒業し、起業。現在は自身の失敗経験を生かしたセミナー講師や、外国人向け賃貸サービスの仕事にやりがいを感じる日々を送る。
高利回りの2棟目と3棟目を満室にして、脱サラ起業
――月に40万円以上の持ち出しがあった1棟目を満室にした後、短期間で次の物件を買われたそうですね。2棟目、3棟目について教えてください。
アンロック伏見さん
2棟目は群馬県足利市にある4,800万円の20世帯の中古マンションで、利回りは15.75%です。築38年ですが、RC造で固定資産評価が7,000万円近くあったので、某公的金融機関で融資を受けられました。プロパンガス会社の変更や、設備の故障など、最初はトラブルもありましたが、満室で運営できています。
3棟目は、千葉県東金市の木造アパート。2DK×4戸と1DK×6戸の全10世帯で、指値が通って2,950万円で買いました。築24年ですが、利回りは14%以上あり、19年の融資を受けられました。
この2棟が満室になった後で、1棟目で融資を受けたS銀行に交渉をして、金利ダウンに成功しました。金額が大きいので、少しの金利でも手残りが大きく変わってきます。3棟すべてが安定したところで、会社を辞めました。
――脱サラ・起業を決めたのは、何かきっかけがあったのですか?
アンロック伏見さん
日本に住む外国人向けのビジネスをやりたいという目標ができたからです。実は、2棟目のマンションに複数の外国人が住んでいたのですが、彼らから「仲間が住むところがない」という話を聞き、外国人を積極的に受け入れるようになりました。
外国人なら誰でもOKなわけではなく、全員の顔を見て、約束を守れないような人は断っています。ただ、ほとんどの人はマジメで、家賃の遅れもありません。それなのに、地方に外国人の住めるまともな部屋がないという現実をなんとかしたい、と思ったんです。
地方では外国人の住むまともな家がないという現実
――東京では海外の方も歓迎という部屋が増えていますが、地方ではまだ保守的な大家さんが多いのでしょうか。
アンロック伏見さん
はい。以前、ある外国人カップルの引越しを手伝ったのですが、前の家は山の上なのに駐車場がなく、エントランスのガラスも割れたひどい状態でした。リフォームもクリーニングもほとんどされていない状態で入居したそうです。ようやく見つけた住居がそこしかなかったと聞いて、驚きました。
こんな状態では、日本は外国人に選ばれない国になってしまいます。アジアの多くの人は、本当はオーストラリアに住みたいと言います。入居者の一人は、オーストラリアは「Living Country」、日本は「Business Country」と話していました。
オーストラリアのビザが下りず、仕方なく日本に来ているということです。そんな彼らがまず目指すのが東京。しかし、学生だと希望した場所の学校のビザが下りないケースも多いので、結果的にビザのおりやすい学校がある地方に住むことになります。
それでも、彼らの多くは、自分を受け入れてくれた町で勉強したり、技術を身につけるという夢を持ってやってきます。それなのに、まともな家に住めないなんて、残念です。若い女性が、汚い部屋を紹介されて泣いたという話も聞きました。
――大家業を通じた人助けですね。
アンロック伏見さん
いえいえ、お金をもらっていますし、そんな立派なものではありません。ただ、このやり方で成功したいという気持ちはあります。
自分の物件では受け入れができる数に限界があるので、最近は、人の物件を借り上げて、外国人に紹介するということも始めました。転貸も入れると、全部で50人くらいの外国人に部屋を貸しています。
例えば、3万円で部屋を借り上げて、外国人に3万7,000円で貸すという格好です。家具家電や火災保険もこちらで負担するので、初期費用に6万円ほどかかりますが、地方ではどこも「住居困難者」の外国人が多いので、入居募集には困りません。
ちなみに、足利の物件は、これまで仲介会社を通して入った人はおらず、全員が紹介です。その足利市では約3割が空室と言われ、困っている大家さんが多くいます。一方で、外国人は部屋を借りられない。その間に自分が入ることで、両方にメリットが生まれます。
このビジネスが成功してマネをしてくれる人が増えれば、夢を持って日本を訪れる外国人も増えるでしょう。地元の大家さんにも、マネをしてほしいと思っています。
外国人向け賃貸は、会員制ビジネスのようなもの
――印象的なエピソードがあれば教えてください。
アンロック伏見さん
スリランカ人の留学生から、サンフランシスコ平和条約が締結されたとき、スリランカの大統領が「この戦争で悪い人はいない」と日本の味方をしてくれたという話を教えてもらいました。スリランカ人はみな知っている事実なのに、自分は彼らのことを何も知らないことを恥ずかしく思いました。
今、スリランカ、バングラデシュ、インド、ベトナム、ペルーの方が住んでいます。年齢は主に20~35才くらいで留学生も社会人もいます。日本は外国人観光客を増やすのに必死ですが、すでに日本に来てくれている外国人に対しても、やるべきことがあるように感じています。
――もともと、外国の方と縁があったのですか?
アンロック伏見さん
外国は好きです。今まで、25カ国以上を訪問しましたし、家族も自分以外は海外に住んだ経験があるので、実家にも外国人が出入りしていました。だから、親しみを感じるのかもしれません。
引越しを手伝ったり、彼らの部屋で飲み会をしたり、僕は普通の付き合いをしているつもりですが、「お前みたいな日本人は初めてだ」と言われます。ただ、さっきも言いましたが、ボランティアではありません。
入居者に、中古車が欲しいといわれて探したり、店を開きたいといわれて代わりにオーナーと交渉したりと、次々と仕事を頼まれますが、彼らとは対等な気持ちでいます。「貧困ビジネス」は絶対にやりません。自分では、「会員制ビジネス」のようなものだと思っています。
苦労もしたけれど、大家業は自分の天職
――今後の目標を教えてください。
アンロック伏見さん
繰り返しになりますが、海外から日本に来てくれる方が快適に生活できる環境を作りたいです。数年先の夢としては、優秀な外国人と一緒に仕事をして、収入を上げていけたら嬉しいです。
日本で学び、自分の国で起業する若者に投資するのも面白いと思います。外国人向けのポータルサイトを作って、部屋や仕事を紹介したいという気持ちもあります。
それと、最近は自分の経験を大家さん向けに話す機会も増えてきました。失敗談が中心ですが(笑)、どんな形でも人の役に立てれば嬉しいです。この仕事が天職だと感じているので、サラリーマンに戻る気はありません。
会社員の頃と違い、今の仕事はどんなに忙しくても体が動くんです。北関東や東海地方など、外国人の多いエリアで物件を探しているのですが、嬉しいことに、地方でも私の活動を面白いと思って支援してくれる人が出てくるようになりました。
――これから不動産投資を始めたいという人に、メッセージをお願いします。
アンロック伏見さん
不動産投資を始めてから様々な苦労もしましたし、この先も何があるわかりません。でも、自分の経験上、不動産投資をすることで新しい世界が開けたので、サラリーマンの方にはやってみることをおすすめします。
リスクもありますが、動いた分だけ成果が得られるので、やりがいは大きいです。ただし、不動産投資は、買うまでは投資でも、買った後は実業です。今後、人口が減っていく中で成功するには、実業のマインドを持つことが大事だと思います。
それと、失敗した私がいうのも何ですが、最初から大きな借金をするのはキケン。最初は小さな規模から始め、自分らしいやり方を見つけていくのがいいのではないでしょうか。
前編:第23回 「毎月40万円持ち出し」の空室地獄からリカバリーした方法
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