政策

大言小語 「家族同然」という言葉

 一般社団法人シェアハウス振興会が推奨している入居者ルールでは、「個室へのノックは禁止」である。たとえ、どんなに仲の良い入居者同士でも一つ屋根の下で暮らしているときに、「いつ誰がノックするかも知れない」という状況は、結構ストレスになるからだという。言われてみれば、その通りだ。

 ▼同振興会の会員社に取材すると「初めて手掛けた物件だが、ほぼ満室稼働」という声が多い。「立地さえ間違えなければ、需要はまだまだある」と自信も見せる。シェアハウスは、空室増加で悩む賃貸住宅市場にあって、唯一元気な業界と言ってもいいのではないか。その割には、大手はほとんど参入していないので、中小企業にとっては魅力的なニュービジネスだ。

 ▼振興会の山本久雄事務局長は「まだまだニッチな業界」と慎重だが、戦前から戦後しばらくあった「下宿屋」の変形版でもある。都市の新たな居住形態として定着していく可能性は大きい。

 ▼一方、相続税強化で2世帯住宅が増え始めている。核家族という言葉は、あまり好きではなかった。現に、核家族が家族の絆を強めたという説はあまり聞かない。日本の住文化が変わり始めた予感がする。

 ▼シェアハウスは快適に住むためのルール作りが難しいが、今やほとんど死語になりかけている「家族同然の付き合い」という言葉を復活させてくれるのではないか。