政策

社説 標準管理規約の改正 「コミュニティ条項」削除に違和感

 マンション管理組合にとって、管理運営内容を定める上で大きな指針となる標準管理規約。その改正が検討されているが、規約の中から「コミュニティ条項を削除する」という方向で話が進んでいる。その検討に対して、マンション管理業協会など様々な専門団体、専門家から反対の声が上がっている。

 国土交通省の有識者会議「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が、数年の議論を経て今年3月に報告書を出した。その中で、「コミュニティ形成に要する費用に、管理費を支出できる」といった規定の定めを疑問視し、改正を検討しているものだ。特に自治会費と管理費を混同していることに、疑問を投げかけている。

 管理費は区分所有法に定めるように、「建物や敷地、附属施設の管理に充てられる費用」であることは原則であり、この点は共通認識として押さえておきたい。問題は、その費用を、コミュニティ活動のために支出してよいものかどうかということだ。

費用分けて適切運営を

 東日本大震災以降、コミュニティの重要性が改めて見直された。「管理の上で、最も重要な活動の一つがコミュニティ活動」という認識も定着している。もちろん、有識者会議が、コミュニティの重要性を否定しているのではない。同報告書でも、「自治会活動の活発化を妨げる趣旨の改正ではなく、管理組合の管理業務と峻別すべきという趣旨」としている。また、費用を分けて適切運用すれば、居住者間のコミュニティ形成や地域コミュニティの円滑化を積極化していくことが望ましいといった内容を、規約のコメント(指針)に別途記載することを提案している。

 ただ、マンション管理の現場から、コミュニティ条項の削除について反対の声が大きく上がっていることは、しっかりと受け止めるべきだ。「日本のマンションにとって、標準管理規約の中には様々なマンションと暮らしの文化が詰まっている。長年かけて作り上げてきたもので、その文化を崩すようなことがあってはならない」と反対派は強く主張している。

 コミュニティ活動の名の下、不透明な管理費の使われ方は確かにあったようだ。ハードの維持管理のためには、十分な費用が必要となる。国土交通省では現在、改正に対するパブリックコメントを集計中だ。その結果を踏まえ、コミュニティ条項をどのようにするか再検討することになるだろう。

 管理費の運用を透明化しなければならないことは当然だが、コミュニティの重要性を国民に訴えていかなければならない時代背景を考えれば、「コミュニティ条項」をわざわざ削除することの違和感は拭い切れない。