総務省が4月30日に速報集計として発表した23年10月1日現在の日本国内の総住宅数は6502万戸(18年調査時6241万戸)で過去最多を記録した。このうち空き家数900万戸(同849万戸)、空き家率13.8%(同13.6%)といずれも過去最高を更新し、増加傾向を示す結果となった。
注目すべきは、賃貸・売却用や別荘等の二次的住宅を除いた空き家の増加だ。18年調査時から37万戸増加して385万戸となり、総住宅数に占める割合も5.9%(同5.6%)に上昇した。使用目的のない空き家は放置され、長期空き家として地域やまちづくりにも悪影響を及ぼす。東京大学不動産イノベーション研究センターの調査では、長期空き家が周辺の住宅取引価格を約3%低下させるとのデータもある。建物所有者の問題にとどまらず、地域の将来価値の観点からも迅速かつ確実な政策の成果が求められる。
昨年12月には空き家の管理・有効活用を促進する施策を盛り込んだ改正空家法が施行された。今年4月には所有者不明土地解消を目的とした相続登記の申請義務化もスタートしたが、産官学が連携する全国空き家対策コンソーシアムの川口哲平代表理事は「現在の空き家問題は入り口に過ぎない。今後、世帯数が減少局面を迎える中、利活用できない空き家が急増する」と危機感を募らせる。既にある空き家の利活用と、新たな空き家の発生抑制という2軸で対策を加速化させなければならない。
強化項目の一つが、空き家発生の主要因とされる相続へのアプローチだ。カチタスが4月に実施した調査では、改正空家法の施行を機に空き家所有者の管理や賃貸・売却等の具体的対策の意識が高まっている点、若年世代のほうが空き家の管理や対策に掛ける費用や時間が大きいことを明らかにした。同社では、「相続に関する家族の対話」の有無が空き家対策の鍵と分析した上で、空き家所有者の割合が高いシニア層のほうが「まだ先のことだから」と対話を先送りしている点を課題に挙げる。これまでにも相続相談に取り組む不動産会社の動きは見られるが、空き家所有者のニーズに寄り添った一層のサービス提供と、事業者がビジネスとして持続的に取り組める仕組みづくりを両輪で推進していかなければならない。
同時に、業界として空き家対策の最終ビジョンを共有する視点も重要だ。改正空家法では空家等管理活用支援法人の指定数などの目標値が示されているが、そもそも空き家が発生する市場環境と中長期でどう向き合っていく覚悟なのか。様々なプレーヤーの参画を促しながらも、玉石混合の空き家ビジネスとなっては空き家所有者の信用は得られないだろう。官民が連携して取り組みを加速化させる局面にいるからこそ空き家問題解決の目指す先を議論し、責任の所在を明らかにすることが対策進展の鍵を握る。