総会シーズン後半の6月下旬、各地で例年より遅めの梅雨入りが発表された。今夏は観測史上最も暑くなった昨年に匹敵する暑さが予測されるが、夏本番を前に、大雨・洪水災害への注意が一段と高まる季節だ。
激甚化・頻発化する豪雨による生活被害は珍しい光景ではなくなった。日本各地で多数の被害が発生した「令和2年7月豪雨」から4年。3年前の7月3日には静岡県熱海市で土石流災害が発生した。後者は災害関連死1人を含む28人の犠牲者を出した痛ましい災害だが、被害拡大の背景には上流山間部の違法盛り土の崩壊があり、その後の調査を経て、盛土規制の大幅強化へと発展した。20年8月には「水害ハザードマップの重要事項説明」が義務付けられており、住まい探しの現場で居住立地の災害リスクを把握することはもはや当たり前の対応だ。梅雨期には、同じ場所で非常に強い雨が降り続く線状降水帯が発生しやすく、被害が甚大化するリスクも増す。〝想定外〟のシナリオを生まないためにも、必要な対策や知見の共有に向けて日々意識を高めなければならない。
業界でも対策は進む。今年3月、大和ハウスと大東建託が「災害における連携及び支援協定」を締結し、両社グループ会社が管理する約189万戸の賃貸住宅や基盤・インフラを生かし、平時と有事において防災活動や災害支援で連携を図る取り組みが始まった。また、災害時には、地域や入居者、オーナーの資産を守る不動産業者自身が被災者となり、事業継続や居住者支援が困難な状況に陥る可能性もある。日本賃貸住宅管理協会は昨年11月、これまで発生した大震災での教訓や経験を踏まえ、賃貸管理業者が災害時に取るべき対応策をBCP(事業継続計画)の観点で整理した「防災マニュアル」を発刊。今年元旦に発生した能登半島地震後にも現地支部に発送し、災害時の現場対応や復旧段階での作業を後押しした。
人々の暮らしに寄り添う住宅・不動産業界にとって、災害に備えた準備や災害発生時の迅速対応、被害状況の把握や住まい確保・生活再建に向けた情報連携など、一層のネットワーク構築が求められる。能登半島地震では、現場事業者から「賃貸型応急住宅制度について行政の対応が十分に機能していない」との指摘もあり、その運用精度の向上は喫緊の課題だ。また、災害対応もこれまでの大地震だけでなく、広範囲にわたるという視点も必要だろう。対応する現場担当者や企業だけが取り組めばいいと様子見するのではなく、業界・行政等が当事者として参画し、実践的な課題の抽出、解決に向けて行動を起こさなければならない。ここに向き合わなければ、消費者からの信頼獲得が遠のくだけでなく、長期的目線で業界の人材獲得を阻む要因になるだろう。住居、地域、人の生命に向き合う業界であるか、その真価が問われている。