「消費者保護」の牽引車に
09年度宅地建物取引主任者試験が10月18日に実施された。受験者数は速報値で19万5,504人。今年度から試験の実務的性格を重視することなどを目的に、宅建業法の出題数を4問増加。実際に業務に従事している受験生からは、歓迎する声を多く耳にした。業務知識を問う問題を増やすことによって、実践力のある人材を養成するという趣旨は、昨今の潮流である「消費者保護」の方向性に沿うものとも見ることができる。
設問については、「前年度よりやや難化したものの、全体のバランスは取れている」という意見が大勢を占める一方、問題文の解釈によって判断に迷う出題もあり、今後の「基礎を重視した、より実践的な設問」に期待がかかるところだ。
情報化社会の急速な進展に伴い、あらゆる職域で知識の細分化が進む中、高度な専門性が求められる傾向が顕著だ。また、不動産関連の資格試験制度の多くが熟成期に入り、要求される知識も複雑化している。
宅建の第1回試験が実施されたのは58(昭和33)年。初回受験者数は3万6,646人。他の多くの資格試験同様、スタート時に社会的要請として資格者確保を重視した特例試験であり、合格率は90%超に。しかし、その後制度も浸透し、受験者数・難易度共に上昇。半世紀以上の歴史を重ね、日本最大の資格試験に成長した。今年度は、長引く不動産不況の影響などで受験者数減少も想定されたが、08年度に比べて微減にとどまった。
受験者数の都道府県別では、東京都が3万6,895人で最も多く、次いで神奈川、大阪、埼玉、千葉、愛知の順。受験者数が1万人を超えたのはこの6都府県で、受験者層が首都圏に集中している傾向が鮮明だ。 不動産適正取引推進機構がまとめた「宅建業者と取引主任者の統計概要」によると、宅建取引主任者資格登録者数は09年3月末で84万3,178人。また、主任者証交付者数は47万1,744人。実際に主任者証の交付を受け、かつ宅建業に従事している取引主任者就業者は27万9,135人。
資格登録者数は、統計調査を開始した93年以降、一貫して増加。主任者証交付者数は03年度末から2年連続で減少したものの、その後増加に転じた。取引主任者就業者は04年度末から5年連続増だ。
女性の進出、顕著
取引主任者就業者の男女別では、男性が21万9,306人、女性が5万9,829人。男性が前年同期比で0.4%増であるのに対し、女性は1.6%増加。就業者全体に対する女性の比率は21.4%で、統計調査を開始した93年度末と比較すると4.0ポイント伸びていることが目に付く。
更に資格登録者数、取引主任者証交付者数でも女性の占める比率が増加しており、統計の面からも女性の進出が目立っている。
ある資格試験予備校の関係者は、「不動産業界全体が活況を呈した数年前と比べると、受講者数は減少傾向だが、この資格を取る必要性などをじっくり考えたうえで試験に臨む人が増えている」と話す。
自らのビジョンをしっかりと構築し、難関に挑戦する層が増えていくことが、ひいては不動産業界全体の活性化にもつながる。「消費者保護」の牽引車としても、「宅建主任者」の持つ役割は更に強まっていくと言えそうだ。