「防災の日」契機に備えを
9月1日は防災の日。1923(大正12)年のこの日午前11時58分32秒、マグニチュード(M)7・9の大地震が関東地方を襲い、死者・行方不明約14万人、全壊建物12万8000、消失家屋44万戸という、激しい揺れと火災による歴史的大災害が起こった。
その関東大震災の災禍を忘れないようにと、1960年に定められたのが「防災の日」である。その記憶は日々、遠くなりがちだが、「忘れた頃にやってくる災害」に備えるために、年に一度の防災の日に関東大震災の教訓を思い起こし、気持ちを新たに防災を考える契機にしたい。
いつ起きてもおかしくない地震
この日を含めた週は「防災週間」として、国・地方自治体などによる大地震に備えた防災訓練が各地で繰り広げられる。国民の間に防災意識が否応なく高まるのは、この日が定められている意義であり、効果である。意識だけでなく、ハード・ソフトの両面から大地震に対する具体的な対応が浸透すれば、いざというときの被害も抑制されるはずだ。
折から、8月には9、11、13日と関東から東海地方を最大震度6弱の地震が襲い、25日には気象庁の緊急地震速報の誤報「事件」も発生するなど、大地震やその対策に関心が高まっている。
関東大震災から86年になるが、この間、これに匹敵する震度7クラスの大地震が関東地方をいつ襲って来てもおかしくないと言われる一方、東海、東南海でも大地震が予想され、観測・予知態勢が取られた。これまでは幸いにも関東・東海エリアでは、大きな被害をもたらす大地震は起きていない。
だが、わが国のほかの地域に目を向けると、最近30年ほどの間に、数々の大地震(震災)が襲来し、各地に大きな被害の爪跡を残した。主なところは建築基準法の改正(新耐震基準)につながった宮城県沖地震(78年6月12日、M7・7)、日本海中部地震(83年5月26日、M7・7)、北海道南西沖地震(93年7月12日、M7・8)、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災、95年1月17日、M7・3)、新潟県中越地震(04年10月23日、M6・8)、福岡県西方沖地震(05年3月20日、M7・0)、能登半島地震(07年3月25日、M6・9)、新潟県中越沖地震(07年7月16日、M6・8)、岩手・宮城内陸地震(08年6月14日、M7・2)など。いずれも震度6から7の激しい揺れを伴った。
恐ろしいのは家屋倒壊と火災
大都市を襲う地震被害の最大のものは、家屋の倒壊や家具などの転倒による衝撃であり、二次被害として恐ろしいのが火災であることは、阪神淡路大震災が教えてくれた。建物の耐震化と耐震補強、耐火・不燃化構造の推進が地震対策の第1であり、既存の中古建物にいかに広めていくかがこれからの課題であることも明白になった。また、揺れの直撃に耐えた後は、救助隊の到着・救援態勢が整うまで、非常用食料・飲料、医薬品・携帯ラジオなどが欠かせないため、3日間くらい持ちこたえられる非常用持ち出し袋を用意しておく必要があるだろう。
このように、大地震・震災の対策は建物の補強から自らの安全・食料確保まで幅広く、ハード・ソフト両面からの備えが必要である。更に、自宅にいる場合だけではなく、仕事・勤務中、通勤・通学途中に遭遇する可能性もある。それぞれの場面を想定して自らの行動を考え、訓練しておくことが肝要だ。