社説「住宅新報の提言」

民都機構による経済支援策

地域発展の後押し期待

 景気低迷打破の一助へ――。(財)民間都市開発推進機構(民都機構)の動向に、都市開発関係者などの間から、熱い視線が注がれている。
 政府の経済危機対策の一環として、都市開発事業に対し、2009年度補正予算で総額4000億円の長期貸付などを行うことが決まったのだ。
 補正予算では国費として2000億円が充てられ、民間から調達される2000億円と合わせることによって、手厚い事業支援が図られることとなった。
 民都機構は1994(平成6)年、経済総合対策の一環として「土地取得・譲渡業務」を創設。バブル経済の発生とその崩壊によって、民間の都市開発がほとんどストップしてしまった状況の中で、当時の政府方針により、事業化の見込みが高い土地について、先行的に取得する制度を臨時かつ緊急の措置として創設することが打ち出された。
 同年3月には、民間都市開発の推進に関する特別措置法(民都法)と都市開発資金の貸付に関する法律の一部を改正して、対応がなされた。

不況脱出の一筋の光に

 こうした施策は、当時、不況脱出の手がかりすらつかめない状況にあった住宅・不動産開発に一筋の光をもたらす結果につながった。土地取得に関する取り組みは軌道に乗った。その後のPFI法制定、不動産証券化の発展といった一連の流れの中で、民都機構が景気全体の浮揚に果たした役割は極めて大きいものがあったといえる。
 土地取得については「買取対象が大企業に集中しているのでは」などといった批判も一部で出たものの、バブル崩壊からの脱却という側面では、極めて的を得た施策であったと言えるだろう。今回の緊急措置についてもまた、こうした過去の成功例を踏まえたものということが出来る。
 民都機構の「経済危機支援策」の目玉は何と言っても、2012年3月末までの時限業務である「経済危機対応参加業務」だ。

融資実行を?前倒し?

 従来、開発プロジェクトの着工時点を原則に資金供給を行っていたのに対して、3年以内に着工できるものといった対象事業基準を含む適格要件を満たす事業に対し、土地評価額の最大5割までについて、民都機構による融資実行を土地取得段階に?前倒し?することが可能になった。
 民都機構の目的は、「民間事業者が行う良好な都市開発事業に対して、資金面・情報面などから多様な支援業務を行うことにより、良好な市街地形成と都市機能の維持及び増進を図り、あわせて地域社会の発展に寄与することを目的とする財団法人」とされている。
 中心市街地のシャッター通りの拡大など、地域社会の疲弊が、国内全体の沈滞にもつながっている。
 こんな時代だからこそ、地域社会の発展を目指す専門機関としての民都機構の積極的な舵取りが、今後の経済状況の浮沈のカギを握っているといえそうだ。