幸福論的「住宅論」 記事一覧
幸福論的「住宅論」
〝ハード〟である住宅を、幸福という目に見えない〝ソフト〟の問題として論じてみたい。なぜなら日本は、住宅を面積や耐震性、最新設備など物理的側面から見ることが多い。にもかかわらず、住宅を購入する根源的動機については「家族が幸福になるため」と臆することなく語る。ハードをハードとして評価することが、どうして幸福という目に見えない微妙なソフトを手に入れることにつながるのか。その〝落差〟を埋めないかぎり、日本人は決して幸福にはなれないと思うからである。
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居酒屋の詩 (48) 惜しめども散りも止まらぬ花の舞い 立ち飲みの店ぞ哀れただよう
JR総武線新小岩駅南口にある「でかんしょ」はディープな立ち飲み屋である。 昼間からやっているのに、店内はなぜか薄暗い。桜が満開となったのに強い春風に散らされ始めた日、数年ぶりに訪ねてみる。店内の雰囲気(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇40 住まいとは何か 生きている理由を感じる場所
単なる拠点か 「住宅を生活のための拠点」 と言ってしまうと、住宅と生活とは別物で、住宅は生活を維持していくためのツールということになる。その時々の「ライフスタイルに応じて住まいを選択する」と言った場合(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇39 新・ビジョンによせて 人口減少社会担う不動産業とは
これからの不動産業のあるべき姿を描いた「新・不動産業ビジョン2030」の骨格がまとまった。 様々な変革が予想される今後10年程度の不動産業ビジョンとして27年ぶりの改定となる。その第三章「不動産業の将来像(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇38 新元号「令和」によせて 住まいが暮らしを和ませる
先週号で報じた住宅新報恒例の「業界・新卒入社状況アンケート」(毎年3月実施)によると、調査対象42社の採用総数は7039人で前年よりも約8%減少した。 ただ、採用を減らした企業が多かったのはハウスメーカー(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇37 住まいと脳の関係 人生で最も長い時間がそこにある
住まいと脳の関係についての研究が進んでいる。積水化学工業住宅カンパニーグループの住環境研究所と生涯健康脳住宅研究所はこのほど、「睡眠状況に関する実態調査」の結果を発表した。それによると、(1)睡眠に満(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇36 共有すべき価値観 今やハードでも、経済性でもない
18年4月に法制化されたインスペクション(建物状況調査)が注目を集めているが、インスペクションにも限界があることを忘れてはならない。インスペクションを実施して瑕疵や不具合がないと診断されても、それはあく(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇35 住み心地が家の本質 信頼を得てこそ建つ住まい
15年10月に、埼玉県熊谷市で創業190年の歴史をもつ大和屋を取材したときの黒田小源治社長の言葉が今でも印象に残っている。 私が、――人口減少で今後住宅需要が減少していくといわれていることについてどう対応す(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇34 アランとアドラー 言葉が感性を刺激する
住まいの本質を本気で見極めようとするなら、住まい以前にそもそも「人間とは何か」を知らなければならない。人間とは何かを知らなければ、本当に生きているとはいえない。本当に生きるということがなければ、住ま(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇33 「所有」と「利用」ーーその特性 賃貸は春風に乗って
これからの住宅・不動産市場を支配する潮流が「所有と利用の分離」「ハードよりもソフト」「フローからストックへ」という3つの流れになることは既に述べた(1月15日号・第26回)。 そして、所有と利用の分離が(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇32 業界の進化とはなにか 個人や企業が為すわけではない
庭に山茶花が咲いている。その山茶花がツバキ科という種の一個体であるように、私もヒト科の一個体として生きている。この世の生物界における個体は、個体として存在すること自体が種の維持存続・進化に貢献してい(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇31 販売戦略と顧客ファースト 真実は〝現場〟にあり
住まいと幸福には密接な関係がある。しかし、住まいを提供する事業者が一歩間違うと、ユーザーや投資家(オーナー)を不幸に陥れる。〝かぼちゃの馬車事件〟然り、レオパレス21の「施工不良問題」然りである。この2(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇30 成長の死角 定まらない心の置き場
1月30日、新年会と一般社団法人設立記念を兼ねた第14回不動産女性塾(北澤艶子塾長)が東京の明治記念館で開かれた。特別ゲストとして招かれたデザイナーのコシノ・ジュンコ氏の話に興味をそそられた。 フィット感が(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇28 大和ハが提唱 五感のゆらぎが人をいやす
大手住宅業界はハードでの差別化が困難となり、新たな戦略を模索している。例えば、分譲マンションのTVコマーシャルを見ると――。 「世界一の時間」(野村不動産のプラウド)▽「人生を極める住まい」(東急不動産の(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇27 新たな価値創造へ GDPと生活満足度は無関係
日本人の生活満足度(幸福感)と一人当たり実質GDPはまったく関係がないという事実は、かつてはよく知られていた。GDPは戦後ほぼ一貫して拡大を続けたが、国民の生活満足度はずっと横ばいだったからだ(図1参照)。 (続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇26 生き方・新流儀 (下) 感性を磨けば人生が変わる
住宅市場で「所有と利用の分離」が進めば、「家は日々の暮らしを楽しむためのもの」と考える人が多くなる。そして、ハードではなく暮らし(ソフト)がより重要ということになれば、住まい探しは「新築にこだわる必要(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇25 生き方・新流儀 (上) 自宅を資金化し〝第二の人生〟
所有と利用を分離 「所有と利用の分離」は不動産の古典的概念だが、超高齢社会と低成長経済を背景に〝背水の陣〟とも呼ぶべき新種の活用方法が登場してきた。その典型が「自宅のリースバック」である。というの(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多信博 ◇24 ホームステージングの〝妙〟 ユーザーの創造力を引き出す
米国から導入 最近はホームステージングという販売手法が注目を集めている。住宅の販売に際し、単に〝リフォーム済み〟と謳うだけでなく、カーテンやテーブル、ソファなどを使って〝暮らしの風景〟を演出してみ(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇23 住宅弱者への貢献 〝人間産業〟への一里塚
国の未来のかたちが定まらないのに、どうして不動産業の未来が展望できるだろうか――と前に書いたが(第20回=11月20日号)、未来が定まっていないからこそ、業界が自ら未来を創ることができるともいえる。これからの(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇22 不動産業の変身 一期一会から、終身の誠意へ
日本の労働者不足を補ってくれる外国人労働者の本格的受け入れが始まれば、住まいの提供が喫緊の課題となる。特定の熟練技能者になれば家族を呼び寄せ、事実上永住できる道も生まれるようだ。 特にそうした人た(続く) -
幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇21 人々が家を求める理由 自分以外の誰かがそこにいる
人々は幸福を求めている。そして、そのための具体的手段として〝家〟を持とうとする人が多い。それはなぜだろうかとずっと考えてきた。その答えがようやく分かりかけてきた。 家は多くの場合、自分だけではなく(続く)