10月1日、「民間投資活性化等のための税制改正大綱」が決定した。国土交通省関係では、既存建築物の耐震・省エネ改修投資促進へ向けた特例措置が盛り込まれた。建築物の安心・安全の確保と共に、経済の活性化が期待できるこの特例創設は大いに評価できるものだ。12月10日前後に公表される残りの税制大綱に向け、自民党税制調査会には活発な議論を期待したい。
例年に引き続き、今回国交省が要望している税制改正項目には、「住宅取得機会の拡大」「中古流通活性化」「良質な住宅建設の促進」などエンドユーザーの住宅取得をバックアップするものが数多くある。現在、住宅取得適齢期と呼ばれる世代は、社会に出てからずっと「デフレ」の中で育ってきた。〝不惑〟の年齢になるまで、経済環境の厳しさを肌身で感じてきた彼らにとって、「景気」に期待することはないのかもしれない。
そんな中にあって、少しでも住宅取得に対して彼らの背中を押す材料を提供することが、政治の果たすべき役割だ。特例措置の延長(現状維持)は当然として、少しでも拡充する方向へと議論されることが望まれる。
中古再販で消費者優遇
中古住宅の買取再販物件において、エンドユーザーが負担する登録免許税と不動産取得税を非課税措置とする要望は、これまでにない大きな取り組みといえる。事業者が物件を取得する際も課税されているため、「二重課税の解消」という位置付けだが、少しでもエンドユーザーの物件取得のバックアップになることを願う。
「老朽マンション」に着手
今回の税制改正要望には、老朽化マンション問題への対応も盛り込まれた。区分所有関係の解消が、容易になる制度の新設を前提とした特例創設の項がある。
国交省の調査では、築30年を超える分譲マンションは129万戸あり、30年後には約3.5倍の447万戸になる。一方、これまでに施されたマンションの建て替え件数は200件程度。そのいずれもが余剰容積の活用など比較的実施しやすい物件であり、今後は建て替え困難なマンションの急増が予想される。その対応を早急に図ることが必要だが、今回の「区分所有関係の解消」は問題解決の1つの大きな手段になると期待できる。
20年には、東京オリンピックが開催される。世界に誇れる都市の構築に向け、今回の税制改正要望でも「都市機能の整備促進」に向けた様々な制度の創設が盛り込まれた。間もなく成立する国家戦略特区法案と合わせ、7年後に向け、思い切った取り組みができる税制改正になることを願う。