総合

大言小語 昭和レトロのゴルフ場

 数あるゴルフ場の中から選んでいただき感謝――。大型連休で訪れた栃木県のゴルフ場に張られた素朴なメッセージだ。ゴルフ場も名門コースから大衆向け、更にリゾートコースなど、料金もサービスもピン切りだが、毎年通ったコースが閉鎖になって

急きょ選択した施設である。

 ▼そこは70年代後半に開業。昭和レトロの雰囲気で、建物や設備などには古くささや傷みも見える。だが、難しいコース設定や速いグリーンなど肝心なところは手を惜しまず、ホテルも掃除が行き届いていた。従業員は一人で何役もこなし、料理は質量とも料金と十分見合う。限られた予算で精一杯のサービスを提供しようという姿勢が見て取れる。地味だがなぜか落ち着き、応援したくなる施設だった。

 ▼我が国は人口減少社会に入り、各分野で生き残りへ競争が始まっている。ゴルフ場も例外ではなく、むしろ最も厳しい業界かもしれない。バブル崩壊後の危機を乗り越えたクラブにとっては淘汰の第2幕である。名門クラブや富裕層向けもいいが、何より大事なのは需要のすそ野を広げる大衆向け施設である。

 ▼昨今はとかく富裕層向けや急増する訪日外国人向けビジネスが注目されがちだが、肝は最も需要の厚い勤労者世帯を意識した商品・サービスづくりである。その努力を惜しまないようにしたい。ゴルフ場も含め、各分野で選ばれ、勝ち残るために。