相続対策として近年、高水準が続いていた賃貸住宅建設にもブレーキがかかり始めた。東日本大震災が起こった11年に相続税の基礎控除引き下げが打ち出されて、昨年から税制が変更されたが、この間に相当量の賃貸住宅が供給されたことになる。
自宅の近所でも、この数年であった建て替えのほとんどが賃貸住宅かあるいは賃貸併用住宅に生まれ変わっている。地域の人口も増えてさぞかし活気が戻ってくるかと思いきや、人影は相変わらずまばらのままだ。ということは、新築の賃貸住宅ももしかしたら空き家がほとんどなのかと勘繰りたくもなる。
かつて、都内の甲州街道沿いに数百戸規模の大規模ワンルームマンションが短期間のうちに数棟も集中して分譲された。地域周辺の空き室は増え、家賃も弱含んでしまったと地域の業者が嘆いていた。賃貸住宅市場は限られた小さな商圏なだけに、大量の供給があるだけで相場にも深刻な影響を及ぼすのだと説明してくれた。
そのような現象がここ数年もの間、国内のあちこちで続いていたのだから、空き家、空き室が更に増えるのは避けられない。ゆくゆくはボディーブローのように家賃にその影響が及んでくることになるのだろう。比較的安定していると言われてきた賃貸住宅投資だが、それも曲がり角に差し掛かったと見た方が良さそうだ。