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大言小語 〝日本一ビル〟の足元

 日本一という言葉には格別の響きがある。それが確かなものであれば堂々と宣伝もできるし、地域の観光資源としても活用できる。それは超高層ビルの高さも同じだ。日本一になれば注目され、社会的な存在として管理運営面などで責任を背負うことになるが、関係者は満足感に浸ることもできる。

 ▼今、高さ日本一は近鉄グループの「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区、14年3月開業、60階建て、高さ300メートル)である。それまでの「横浜ランドマークタワー」(横浜市西区、70階建て、296メートル)を抜き、展望台などで様々なイベントを企画しながら観光客を集める大阪の名物ビルとなった。それを27年度に上回るのが三菱地所の「常盤橋街区プロジェクト」だ。15年8月末、東京駅日本橋口前に61階建て、高さ390メートルのビル計画を発表した。工事に時間がかかるのは計画地の建物に重要な都市インフラが組み込まれていることが一番の要因である。

 ▼その日本ビルでは今、下水ポンプ所の機能を維持しながら段階的に再整備するための部分解体工事が行われている。前回東京五輪の際、特定街区として進められたインフラ施設と民間施設との一体化を解消し、施設を更新するものだ。

 ▼20年に再び五輪を迎えることになったが、奇しくもリニア中央新幹線開業と同じ年に竣工する超高層ビルの足元には東京の街がたどってきた都市計画の変遷が見え隠れする。