新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、その対応として中央省庁の行政機関から行事や会合の中止の発表が続いている。住宅・不動産業界も同様にイベント等の中止や延期が相次いでいる。
政府は2月26日の同感染症対策本部で、同月25日に策定した「対策基本方針」イベント等について「全国一律の自粛要請を行うものではない」とした方針を改め、「今後2週間は、中止、延期または規模縮小等の対応を要請する」として、主催者らに対する要求を強化した。
こうした国の方針と感染拡大防止に向けた社会的要請を受け、国土交通省が予定していた説明会なども見直しを余儀なくされている。2月27日現在、同日に愛媛県宇和島市で開催予定だった「持続可能な地域構造シンポジウム」が既に中止されている。
更に、同月3日に始まり47都道府県で実施予定だった「良質な住宅・建築物の取得・改修に関する支援制度等説明会」は、同月28日以降の開催(計16回)をすべて取りやめた。同様に、同月12日から全国で開かれている「サービス付き高齢者向け住宅整備事業およびセーフティネット住宅改修事業等説明会」は、同月28日以降の日程(計3回)を中止。国交省・経済産業省・環境省による「ZEH等の推進施策についての3省合同説明会」(3月3日から13日まで全国6都市計7回)は全日程を中止とする。
影響は対外的なイベントにとどまらない。国交省、厚生労働省、法務省が3月3日に初会合を開く予定だった「住まい支援の連携強化のための連絡協議会」は開催を延期。国交省と農林水産省は、19年台風15号等への対応として2月28日に予定していた「高潮浸水想定区域図に関する検討会」初会合の中止を決めた。
加えて国交省は、建築士法に基づく建築士定期講習を実施する11の登録講習機関に対し、4月末まで同講習の実施を控えるよう要請している。
同感染症が、国民の健康や社会経済に対する被害にとどまらず、国による政策・施策の検討や実施などに対しても悪影響を与え始めた様子がうかがえると同時に、業界も対応を急いでいる。
団体、企業も対応に追われる
この事態を受け、業界も行事の中止や対応に追われた。全国宅地建物取引業協会連合会は各宅建協会に法定講習の対応で理解を求め、事態・状況を判断しながら対応を進めるという。全日本不動産協会では、地方本部主催の消費者セミナーやステップアップトレーニングなどが中止。全国住宅産業協会も都内で予定する2日間の不動産後見アドバイザー資格講習会を延期したほか優良ストック住宅推進協議会の「スムストック」の年次報告会も中止となった。
そうした中、東京・新丸の内ビルディングで2月13日に行われたイベントに参加した石川県職員が新型コロナウイルスに感染したとの報道があり、この件について三菱地所は詳細を説明。当時、職員は発症しておらず会員制の施設で行われたため、会場や動線は独立しており、参加者は濃厚接触者に含まれなかった。予防的措置として消毒を行ない、テナントへの説明文書も配布したが、結果的に誤解を生む状況になったとした。
また、大京は五輪開催を前提にサテライトオフィスなどの対応を行っているが、新型コロナでは時差通勤を推奨し、更なる対応は検討中としている。森ビルは、2月29日から3月13日まで森美術館など3施設、外国人が多い森ビルデジタルアートミュージアムは収束の見通しが立つまで、臨時休館を決めた。