手取り15万円のごく普通の一人暮らしの会社員。貯蓄もろくにない。ある日突然、「来月から3カ月手取り11万円になる。それ以降も給料はどうなるか分からない」と言われたら、どうだろう。社長に抗議してもどうにもならなければ、11万円で生活するしかない。趣味や旅行に使うお金は切り詰めて、場合によっては食費も節約するだろう。少なくとも消費したいとは思わない。
▼先日内閣府が発表した4~6月期のGDP(国内総生産)速報の年率換算27.8%減を家計に置き換えるとこんな感じだ。戦後最悪の落ち込みと言われてもピンとはこないだろうが、家計に置き換えると実感をもって経済の悪化を感じることができる。そして、そのシナリオは、家計においても所得減少や雇用悪化として現実になりかねない。
▼所得が下がれば、家賃を下げるために、郊外へ引っ越すという動きが出てくるかもしれない。実際、在宅勤務の普及で、郊外の分譲住宅に対する見直しの動きが表面化している。毎日通勤をする必要がないため、住環境の良さや住まいの広さが評価されたからだ。所得減少などをきっかけに、同様の動きが賃貸住宅で起きても不思議ではない。
▼在宅勤務に対応した郊外の賃貸住宅が増えれば、都心での家賃下落、郊外での家賃上昇という現象が表面化するかもしれない。今後の家賃相場の動きには、注目したほうがよさそうだ。