国税庁は1月26日、新型コロナウイルス感染症の影響により地価が大幅に下落した大阪府の3地点について、20年路線価(同年7月1日公表)の補正を行うことを明らかにした。経済状況の悪化による路線価の補正は初めて。
今回の「地価変動補正率」の対象は、いずれも大阪の「心斎橋筋2丁目」「宗右衛門町」「道頓堀1丁目」の3地点(表参照)。対象期間は20年7~9月分で、補正率はすべて0.96。相続税等の金額としては4%減額される形だ。例えば「心斎橋筋2丁目」は1m2当たり2152万円だったため、補正率を適用すると2065.9万円となる。
地価下落の要因としては、同感染症によるインバウンド観光客の減少が最も大きい。大阪に限った現象ではないものの、19年以前はインバウンド増に伴い、大阪の中心部などで特に不動産ニーズ拡大と地価の急上昇が見られていたため、同庁はその〝反動〟も大きかったと推測している。
対象追加の可能性は大
路線価は、毎年1月1日時点の地価評価である地価公示などを基に、時価の80%を目安に相続税等の基準額を設定している。そのため、年内に大幅な地価変動が発生すると、路線価が時価を上回るケースが発生。災害等により一定範囲で著しい地価下落が見られた場合には、個別評価に係る官民の労力の軽減のため、同庁は租税特措法に基づく「調整率」を定めて路線価の減額を図っている。
20年路線価の場合、地価公示の評価タイミングの関係で同感染症の影響による地価下落を反映しておらず、同庁は公表当初から「補正による大幅な地価下落への対応」を示唆していた。その後、同庁は同年10月28日、「少なくとも6月までは、路線価が時価を上回るほど大幅な地価変動は確認できなかった」として、補正を見送った経緯がある。
同庁が外部専門家に委託するなどして調査したところ、今回「補正率」が設定された3地点は、いずれも20年地価公示と比較して23%下落していた。このほかの地点でも地価の下落が見られたものの、補正の目安となる〝20%以上の下落〟には至らず、今回は対応を見送った。
しかし同庁の担当者によると、今回補正を見送った地域でも15%以上の地価下落が観測された地点は複数ある。それらの地点は「地価の推移なども考慮すると、あくまでも理論的にではあるが、今後20%以上の下落となる可能性が高い」として、補正対象の拡大はあり得るとの見解を述べた。また20年10~12月分の路線価補正については、4月を目安に発表する予定だ。