国産材供給安定に向けた住宅メーカーの取り組みが本格化している。輸入木材を中心としたウッドショックの影響は落ち着いたものの、木材調達先を多様化することは、「住宅供給が滞らない体制を整えることが大切であると考える」(三井ホーム)からだ。国によるカーボンニュートラルに向けた取り組みが進む中、国産材の安定供給は、今後もハウスメーカーにとって避けて通れない課題となっている。
国産材の安定供給に向けた取り組みとして、住友林業は、持続可能な森林経営の拡大・推進を図る。具体的な取り組みとして、住友林業は国内森林アセットマネジメント事業を実施。ICT(情報通信技術)の導入支援コンサルティングや、地方自治体に対する実効性を伴う森林・林業のマスタープラン作成支援、森林所有者や林業従事者に対する収益性の高い林業経営支援など「10近いプロジェクトが動いている」(光吉敏郎社長)と言う。
住友林業は、東京大学と協定し、バイオエコノミーシステム(樹幹型共生経済)の構築を目指している。森林経営において、木材の生産、加工、住宅や非住宅での木材利用など国産木材の価値を高める取り組みを積極的に行う意向を示す。
大規模木造建築物の展開に注力する三井ホームは、木造マンションの新ブランド「MOCXION(モクシオン)」を立ち上げ、東京都稲城市で第1号物件を建築した。第1号物件では、国産材である信州カラマツの2×10材を釘でつなげた「NLT材」として、床組みの一部に採用している。また、三井不動産グループの保有林(北海道)において、伐採適期を迎えた木材や間伐材を、軒裏や内装材として活用している。
国産材利用の拡大図る
現状、三井ホームでは、九州エリア、関西エリアを中心に国産材を利用しており、昨年7月からは関東エリアの一部、今年4月から中部エリアでも使用するなど展開を拡大している。今後の国産材の利用については、住宅を中心に非住宅でも推進。更に、米材、欧州材との複線化の一つとして安定確保する体制を維持する中で、国産材利用を推進するとしている。
三栄建築設計、オープンハウス、ケイアイスター不動産の3社は「一般社団法人日本木造分譲住宅協会」を設立し、国産木材の使用や国産木材を適正価格で継続的に供給できる仕組みを構築。6月から同協会に参加する会員の募集を開始しており、会員企業に対して国産木材を提供する。このほかにも、林業の担い手育成や植樹活動などを行う予定で、会員企業のSDGs(持続可能な開発目標)達成を踏まえた活動内容となっている。
このほか、戸建て分譲事業を中核とする飯田グループホールディングスは、10月に資材調達を統括・管理する中間持株会社を会社分割により設立する。主に木造戸建て住宅を供給するハウスメーカーにとって、国産材の安定供給への取り組みは中長期的なものとなりそうだ。