住宅設備機器や建築資材のインターネット通信直販を基に、住宅全体のデザインをオリジナル『コード』化、これを軸に既存木造ビルダーを組織化し、自社、ビルダー共に業容拡大を具体化しようとするのがサンワカンパニー(大阪市北区)の山根太郎代表取締役社長だ。山根社長に住宅市況の現状、ポストコロナとそれ以降の成長シナリオを聞いた。27年までに売上高1000億円を達成し、50年には1兆円企業への成長戦略を描く。関西発・住宅業界発のユニコーンが見えてくる。
――不動産市場の現況は。
「住宅設備販売直販という当社事業の性質・立場上、どの商品が取引されるかで、どの分野が動いているか把握しやすい。昨年4月の緊急事態宣言発出以降の出荷ルートから判断すると地域ビルダーへの影響は小さく感じた。半面、大手ハウスメーカーは販売センターの閉鎖や完全予約制の実施を余儀なくされ集客減によるダメージが大きかった」
「その後は、マーケットも動き出し増加傾向に転じるが、住宅建設の人件費や原材料価格の上昇が住宅価格押し上げにつながるなどマイナス面も出てきた。特に(北米発の)『ウッドショック』の影響は少しずつ表面化する可能性がある。もっとも、巣籠りの長期化や在宅勤務(リモートワーク)の広がりで小規模リフォーム需要は活況だ」
――新サービス「ASOLIE(アソリエ)」について。
「『住環境の底上げ』実現が『アソリエ』の狙い。住宅への強いこだわりを持つユーザーが増え、デザイン性の高い住宅需要が高まっている。例えば建築家や専門の設計者などのデザイナーに頼った従来型の自由設計では1人のデザイナーが1年に設計できる物件は2~3棟で、価格面でも建築費に設計報酬料が付加されるなど決して身近なものではない」
「そこで、価格を抑制しながらデザイン重視の需要に対応できるように、上質・高品質な自由設計ノウハウを言語化した『デザインコード』を開発。これを提供・活用することで地域工務店を対象にした〝デザインネットワーク〟を構築した。取りこぼしていた需要も取り込めるようになる」
――ノウハウだけを提供する通常のフランチャイズ(FC)とは異なる。
「そのためのノウハウの言語化であり、『デザインコード』はデザイン性の高い住宅づくりを汎用化するためのいわば〝レシピ〟。絶えず改良しアップグレードしながら提供する。たとえレシピをコピーされたとしても、住設機器を納入するので当社に痛手はない。むしろ高デザイン住宅を提供できることで、当社・加盟店・顧客三方共に利益がある」
――住宅デザインのサブスクリプションといえそうだ。
「デザイナーと協働するビルダーは(住宅受注)シェアの4%程度に過ぎず、8割を地場ビルダーが占める現状を踏まえれば、『クォリティを高められれば、日本の住宅は良くなる』はず。これが『住環境の底上げ』の意味だ。ネットワーク加盟工務店には当社ウェブサイトやSNS(交流サイト)を活用しながら集客・送客を代行し、受注を後押しする」
「サービスのフラッグシップ(旗艦)ハウスとなるモデル棟を22年の完成をメドに芦屋市内に現在建設中だ。ここから『アソリエ』の内容をアピールする。初年度の加盟店目標は100社。加盟料は1社250万円で来年4月以降に月額5万円(コード使用ロイヤリティ)をお支払いいただく。それまでに全コードを完成させる。7月29日からフェイスブックを中心にSNSで加盟店先行募集を行ったが、1週間ほどで当初目標の25社を上回る30社から申し込みを承っている」
――話は変わりますが、仕事で大切にしていることは?
「スピード感だ。『小さいことでもすぐに始めること。行動に移すこと』。座右の銘は『蒔かぬ種は生えぬ』。アソリエも軌道に乗るとの確証と自信をもって即座にシステムを構築し商品化した」
「学生時代からテニスを続けているが、マルチナ・ヒンギスら世界を転戦するプロのトッププレイヤーと練習をともにした。その経験から『勝つためには、もっと練習しなければ』という目標達成のための明確な行動指針、視座をトップレベルに併せることが重要であることを学んだ。それが今に生きている」
――今後の展開は。
「27年までに売上高1000億円、もしくは営業利益100億円を達成し、50年の売上高1兆円を目指す。当社のビジョンは『大阪発、世界の人々の〝暮らし〟で最も必要とされる企業集団を目指す』。その企業が無くなっても困らない、その企業が儲かったら何をしてもよいでは意味がない。生活に必要不可欠な会社であり続けることが重要。蓄えた資金を次のステップで活用し存在意義を示していく」
「指針は3つ。馬車で例えれば安い馬車を作る→早い馬車を作る→車を作る、今までの延長線上にないもの創る。この考えを持ち続けたい。現状、IoTやAR・VR(拡張現実・仮想現実)といった次世代技術への取り掛かりを視野に3社を対象にベンチャー投資も行っている。将来を見据え成長分野・企業との絆を強めておきたい」