3月期中間決算も出そろい、大手ディベロッパーは過去最高の業績を記録している会社が相次いだ。詳細は省くが、主な要因は分譲住宅の好調さに加え、底堅いオフィス賃貸だ。一時はオフィス不要論もささやかれたが、新型コロナの影響も緩和され、リモートワークからオフィスへの出社に切り替える企業も増えてきたことも追い風となり、通期でも過去最高の業績を見込む。23年度も好調さを維持できるだろうか。
23年のオフィス市況を見ると、東京23区の延べ床面積1万m2以上の大規模オフィスビルは、過去20年間平均を上回る132万m2の大量供給を予定している。特に虎ノ門エリアや渋谷エリアといった一等地で、大規模再開発オフィスが稼働する。リーシング状況は明らかにしていないが、注目度が高い魅力ある新築オフィスは満床に近い状態で稼働するだろう。
23年のオフィス市況は大量供給にもかかわらず、引き続き堅調という予想を立てるには少し早計だ。大手でもリーシングは一筋縄ではいかない現実がある。その兆しは既に出ている。
ある企業が大手ディベロッパーの供給する最新オフィスビルへの移転を決めた。そのオフィスビルは大変な好立地で、最新鋭の設備を備え、DX対応や感染症対策、独自サービスの提供も行われている。その企業の社員に話を聞くと、その企業の社長は、その大手ディベロッパー出身。リーシング担当が社長に直接頼み込み、移転が決まった。賃料水準は相場並みだが、フリーレントはかなり長い期間設定してもらうなど、好条件だったという。大手はあらゆる営業努力で満床にする。
こうした営業努力の結果、テナント企業が移転した後の二次空室の問題は深刻さを増すだろう。景気後退ともなれば、全体としてオフィス市況は悪化し、最新ビルと既存ビルとの二極化が顕著になる可能性もある。二次空室対策として、既存ビルにおいて〝行きたくなるオフィスづくり〟は可能なのか、米国・グーグルのよく知られる事例が参考になりそうだ。グーグルは、世界中のオフィスで社員であれば、誰でも無料で味がよい食事を提供していることで知られている。社員の招待があれば、外部の人でもその食事を食べることができる。打ち合わせに来社してもらえるため、社員の移動時間を省ける効果があるという。
こうした取り組みを自らできないテナントのために、ビルオーナーがおいしい食事提供をすることは、二次空室対策になりうる。実際に、最新ビルの共有部において食事提供スペースをデベ側が整備した事例もある。これはあくまでも参考例にすぎないが、23年は不動産の価値プラスαとなる今までとは違う角度からのオフィス提案が必要だ。二次空室の悩みを解決するには、創意工夫がこれまで以上に重要になる。