前回から続いての市区町村役場での調査。調査は「買主が不動産の利用について制限や不利益を被らないか」を目的に全体像を把握しつつ、細部について調査をしていく。その方が不動産の全体像を把握しやすい。
そのため筆者は、都市計画課を皮切りに道路課建築指導課都市建築の関連課(宅地開発課、景観課)→上下水道課→防災課→文化財課→資産税課の順で周っていく。
不動産によってはこれ以外の担当課も回ることもあり、ネット調査で分かれば省くこともある。自身のやり易いように調査順を決め、必要な担当課を周っていけばよい。
今回は道路課から。主に幅員と管理状況の確認を行う。具体的には前面道路の種別と管理、認定幅員、道路境界確定の有無を調べていく。
登記情報で前面道路が公道か私道かは当たりがついているはずだが、公道なら市区町村道か国県道なのを確認する。後者なら都道府県庁や建設事務所に確認をしなければならなくなる。
また、私道でも稀(まれ)に管理は市区町村役場が行っていることがあり、私道所有者に代わって管理関係の手続きを行うので念のために確認をしておく。認定幅員は何メートルか、現況把握か、道路境界確定の有無を確認する。最後に道路台帳図等を印刷してもらえるなら取得しておこう。
建築指導課では主に再建築の可能性、建築物の違法性、その他には建築の際の制限や緩和を調査する。
具体的には前面道路の建築基準法上の扱い、日影の制限、その他建築制限と緩和をヒアリングし、建築計画概要書や台帳記載事項証明書を閲覧取得して現在ある建築物の違法性も確認する。
まず、前面道路の建築基準法上の扱い。42条1項5号(位置指定道路)なら位置指定道路図を取得して建築条件を確認、42条2項道路なら道路中心線の位置とセットバックについてヒアリングをしていく。
正確には道路中心線の判定に係る調査書を提出してからになるが、対象物件や近隣の物件による中心線判定が出されていたらその内容確認と関係書類を取得して中心線の目安を付けておきたい。
建築基準法外の道路は一番の問題。原則、再建築ができないが、建築審査会などを通しての再建築の可能性があるかをヒアリングで確認をしておきたい。それと建築計画概要書を取得して現在ある建築物との違いも見ておく。
概要書の記載内容と面積や階数が異なり、検査済証が出ていなければ違法建築の可能性が高い。その場合、売買に伴う融資が通りにくかったり、安全性の担保に問題が生じるため、対応策を考える必要が出てくる。
次回は都市建築の関連課での調査から始めたい。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。