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大言小語 春の家賃上昇

 24年春は〝コロナ明け〟を確認する賃貸繁忙期となっただろうか。全宅連の不動産市場動向調査によると、24年3月の首都圏居住用賃貸の成約件数は前年比7.0%増で、9カ月連続で前年を上回った。企業の賃上げ機運が消費者のマインド改善を後押ししたのか、コロナ禍で抑えられていた転居需要も強まり、好調に推移したとの声が聞かれた。

▼特徴的だったのは東京圏での賃料上昇だ。各タイプの家賃上昇が確認された中でもファミリー向けは、高年収層と共働き世代がけん引役を担った。いえらぶグループの調査でも特に都内ファミリー向け物件は前年比20%超で前年から約6万円も上昇した。背景にはコロナ禍の落ち着きと共に都心回帰の加速、ファミリー向け物件の新規供給不足といった状況があるようだ。

▼他方、募集側・ユーザー側の賃料ギャップも浮き彫りとなった。ライフルが分析した同期間の市場動向では、3月の23区ファミリー物件の掲載賃料(前年比17.8%増)に対し、ユーザーの反響賃料は2.6%増にとどまり、ユーザー側の反響が追いついていない状況を示唆する。同じ面積帯の部屋を探せば賃料アップは不可避だが、「昨今の物価高や周辺相場への対応」などを理由に更新客に対する値上げ交渉も進んでいるという。実質賃金の低下が続く中、庶民にとっては更新も住み替えも負担感が増す。家賃という固定費を削る動きが出てくるかもしれない。