久々に顔を出した同窓会で恩師の他界を知った。己の年齢を改めて顧みることとなったが、普段思い出すこともない中高時代の授業や恩師の口癖などが久々に蘇った。
▼朝刊のコラムの要旨・感想をまとめるという日課や、教材に使用する文学作品の書き写しなど、とにかく面倒な課題を出す先生だった。そして、読むものにも口うるさかった。生徒の自主性を重んじる校風だったため、禁止こそされなかったものの、週刊誌やスポーツ新聞などを読むことに対しては特に辛らつで電車の中刷りに目を通すことにすら、眉をしかめておられた。
▼今振り返れば、指導の辛抱強さに頭が下がる。提出物などを確認する手間だけでも、課題とは出されるよりも出す方が何倍も面倒なのだ。とはいえ、読むこと関しては、社会人になってほどなく、どのような媒体であっても、まずは読んでみなければ分からないことや、まずは目を通さなければ見落としてしまう重要なことが存外多く、〝清濁併せ呑むことも必要〟と完全に開き直り、そのまま現在に至るまで、〝恩師の教え〟の真逆を行く日々を過ごしている。
▼いまやネットの普及で、当時とは比較にならない量の情報を取捨選択しなければならなくなった。教えに反することに後ろめたさなど感じる暇なかったが、〝情報の沼〟から見つけ出されるものを提供する術を、一度で良いからうかがってみたかった。