社説「住宅新報の提言」

業界の新年会風景 復調と変化の兆しを本物に

 住宅・不動産業界団体の新年会は1月末まで続くが、中旬までに全国組織の団体が主催するものは終盤を迎える。そこに出席して気づいたのは、例年以上に出席者が多く、明るいムードが漂っていたことだ。「昨年より良くなる」との声も数多く聞かれた。
 リーマンショック(08年9月)で住宅・不動産市況が急落。税制や住宅エコポイント制度などの政策効果が実を上げて、10年にようやく復調の兆しが出てきた。また、政府の新成長戦略(昨年6月閣議決定)も明るい材料だ。地球環境対策(低炭素化)の推進と共に、都市再生と住宅振興が大きな柱の1つ入った。国際競争力を高める大都市再生と地方都市を含めた地域活性化を戦略的に整備する総合特区制度の創設、中古住宅流通量を10年間で倍増させることや、耐震・断熱改修を含めた住宅ストックの活用など、業界にとって追い風の施策が打たれたこともある。

税制など条件は整う

 団体長のあいさつも、昨年末の政府税制改正大綱で住宅・不動産・都市などに関する業界要望がほぼ認められたことを評価する声が大半だった。そうした条件が整った以上、住宅・不動産分野が内需の柱として、日本経済にどこまで貢献できるかである。都市・住宅の活性化と低炭素化の推進は今やディベロッパーやビル事業者、住宅メーカー・工務店から、地域に根ざす不動産会社まで、非常に重要な分野となった。成長戦略の下で、大いに推進してもらいたい。
 その復調への大事な時期に、何とかならないのかと言われるのが「政策より政局」の政治のごたごただ。株価は新年早々、上昇続きで幸先の良いスタートを切った。欧米の財政危機や経済低迷で、日本見直し機運が持ち上がっていることも背景にある。この流れを生かすには、適切・機敏な政策運営が欠かせない。政治は、是非ともその方向に転換してもらいたい。

消費税と公益法人問題

 折から、菅・第二次改造内閣が1月14日発足した。消費税の引き上げとTPP(環太平洋経済協定)加盟を今後の政策の大きな柱に掲げているようだが、消費税に関しては住宅・不動産業界には以前から根強い異論がある。新年会でも「いずれ議論になること」と前置きして、日本住宅建設産業協会の神山和郎理事長が「住宅は資産であり、消費財ではない」と釘を差した。「そして取得、保有、譲渡の各段階で課税されている。国民の負担が大きすぎる」と訴えた。大いに議論してもらいたい。
 また、多くの中小不動産業界団体が今、公益社団法人への移行申請準備を進めている。市況や経済動向などへの関心と共に、この問題への対応が差し迫っている。今年度中に準備を完了、機関決定経て、来年度早々に申請する計画のところが多い。移行予定の団体は公益活動に主軸を移すため、今後は活動そのものが大きく変わって来そうだ。
 経済や不動産市況の復調の気配と、新たな変化の機運が漂う。兆しを本物にしたいものだ。