認知度高め、推進努力を
東京建物やNTT都市開発といったディベロッパーが高齢者専用賃貸住宅の事業に進出しはじめた。
すでに東急不動産も手掛けている。しかし、まだまだ少ない。そもそも高齢者専用賃貸住宅(高専賃)といっても、一般的には、その知名度は極めて低い。
高専賃は、有料老人ホームなどとは違い、高齢者を対象としているものの、高額な入居一時金はなく、設備によっては別途契約で食事や介護サービス、健康診断も受けることができる。
他のシニア住宅との大きな違いは、主に一般の賃貸契約となっている点だ。しかも終身建物賃貸借方式をとっているところもある。
これは見方によっては、入居者の移動が少なく、いったん決まれば経営の安定が期待できる。
しかしながら大手デベロッパーによる進出は今のところ限られている。
レベルにばらつき
もっとも高専賃そのものが少ないのかといえば、そうではない。(財)高齢者住宅財団には、全国で約1600件、4万1000戸を超す高専賃が登録されている。
これらは同財団のホームページから地域や広さ、賃料、設備の内容などから検索できるので、希望物件を探すのは容易だ。
条件を指定しないで東京都の空き室だけで検索すれば31件1100戸以上がある。これで見ると、数だけでいえば、余っていることになる。
実はこのなかにはバリアフリーというだけの施設だったり、かなり老朽化した建物もあるといわれ、中身はとても充実しているとはいえない。
制度の複雑さも、良質な物件の普及を阻んでいる。
一般にシニア住宅といっても、住宅政策の国土交通省、福祉政策の厚生労働省というように所管官庁がまたがる。 そこで両省は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)を一部改正し、共同で基本方針を策定、5月から対策を強化していく。
ようやく一定の基準に満たないで登録している高専賃は排除される。
希望者との接点はどこか
こうした物件をあっせん、仲介する立場の不動産業にとっては、さらに壁が高い。高齢者へのサービスがある高専賃となると理解も進まず、流通ルートにすら乗らない。
勢い事業者が直接探すか老人ホームを扱う専門業者などに限られてしまう。仲介業者には高齢者の需要に対応する仲介努力を望みたい。
事業者側にとっても、満室になるまで建物完成から2~3年を覚悟しなければならないことが課題になっている。 このためディベロッパーにとっては、いい土地があれば高専賃ではなく、まずマンションを建てるというのが、正直な気持ちだ。
マンションが売れているうちはいいだろう。しかし今後、日本の人口は増えない。いや、減っていくと断定していい。
しかも住宅は余っているのである。住宅・不動産業は、この現実に目をそむけることがあってはならず、シニア住宅への取り組みは焦眉の急なのである。
その際、一般の賃貸住宅と大きく変わらない高専賃への取り組みを出発点とすべきだろう。