社説「住宅新報の提言」

高齢社会から見えるもの

団塊世代の「変革」に期待
 08年9月の「リーマンショック」以降、世界的金融危機が続く中、日本の置かれた状況はますます混迷の度を深めている。特に日本の場合、景気低迷に加え、世界先進国に先駆けて「人口減少社会」に突入するなど、社会構造自体の変革期に重なったことが、事態をより複雑化させている。それが、市民生活の根幹をなす「住」にも直接影を落としている。

65歳以上の割合35年に3割超へ

 日本の住宅・不動産業界を考える場合、大きな関心事の一つは「住まい手の動向」、すなわち人口動態である。
 国立社会保障・人口問題研究所が08年末に推計した「日本の市区町村別将来推計人口」調査結果からは、日本の急速な「少子高齢社会像」が鮮明に浮かび上がってくる。
 総人口に占める年少人口(0~14歳)の割合は、05年の13.8%から30年後の35年には9.5%に低下。生産年齢人口(15~64歳)の割合は、05年の66.1%から35年には56.8%と10ポイント近く低下すると試算している。また、総人口に占める老年人口(65歳以上)の割合については、05年の20.2%から35年に33.7%に急上昇する。更に、35年になると、老年人口割合が40%以上の自治体が4割を超え、75歳以上の人口割合が25%以上の自治体が全体の半数を超えると推計されている。
 住宅・不動産業を支える根本部分である「住まい手」の置かれている状況は、大きな曲がり角にきているといえる。

「2010年問題」上回る深刻さ

 東京都心のビル大量供給が稼働率低下を招くといった「2003年問題」「2007年問題」が騒がれた時期に、話題に上っていたのは、団塊世代がほぼ定年を迎えるオフィスビルの「2010年問題」だった。都心の労働人口減少と同時に、地方の地盤沈下も深刻化するといった不安の声が専門家からも挙がった。
 結局、オフィスビルの「2007年問題」は、東京圏オフィス市場の活況によって、「杞憂に過ぎなかった」ということで決着をみた。08年以降、「2010年問題」はほとんど話題に上らなくなったといってもいいだろう。
 しかし09年。事態は想像以上に深刻なものとなっている。「団塊世代のオフィスワーカー減」の不安をはるかに超える「危機」にのみ込まれてしまったことに改めて気付かされる。いまや、「○○年問題」と命名することすらできない事態に直面している。
 こうした時代の変革期にあって、「住」という側面から考えていかなければならないことは、やはり競争原理や経済第一主義に踊らされない確固たる姿勢だろう。個々人・企業が真剣に「生活の真の豊かさ」を追求していくことが何より重要となる。
 そのカギを握るのは、新たに「第二の人生」を切り開いていく「団塊世代」だ。
 高層住宅管理業協会の黒住昌昭理事長はこう指摘する。「今後、団塊世代が職場から自宅に舞台を変え、積極的に地域活動を展開していくことが、ひいては住生活全体の活性化につながっていくのではないか」
 昭和、平成と、常に「時代を揺さぶってきた」団塊世代による新たな成熟社会づくりが、閉塞感極まるこの現状を?変革?してくれることに期待したい。