住新記者のひとりごと

仙台マンション市場で見た震災の爪痕

 7月上旬、仙台に行きました。中古マンションの価格上昇が伝えられる中、新築マンションを含めて、仙台のマンション市場の現状を取材しました。〝中古マンション価格上昇続く〟(住宅新報7月30日号)として、まとめています。

 内容について、簡単に触れますと、震災後、中古も新築も住宅を失くされた方をはじめとする震災関連の需要が集まったことで、現状は売り物件が不足状態。その中で一般の一次取得者需要があり、需要が供給を上回っているということです。また、本文では触れていない部分では、価格面を意識しての購入が多い中古住宅ですが、仲介業者の方からは、「築年数をはじめとする耐震性を気にする人が多くなった」という声が聞かれたのも1つの特徴と言えます。

日常への回帰は

 私自身、東日本大震災後から1年ほどは、プレハブ仮設住宅の代わりとして、民間賃貸住宅の空き家の活用が進んだ動きを取材していました。〝加速する民賃借り上げ 仙台市と業界団体の取り組み〟(住宅新報2011年5月10日号)〝民賃借り上げを考える――宮城県に見る課題〟(住宅新報2012年2月21日号・3月6日号)などとして、まとめています。

 これらは、震災による直接的な被害を背景にした〝災害救助〟という枠組みでの住宅・不動産の動きです。それに対して、今回の取材は震災から2年以上が経過した中での市場の話。少しずつ落ち着きを取り戻し始めているだろうという感覚をどこかに持って、仙台へ行きましたが、取材を進める中で、震災の爪痕の深さ、影響の大きさを至る所で感じました。

 特に印象に残っている言葉が2つあります。

 仙台市内の地元不動産業者の方が口にした「ようやく復興が始まったということだよ」と、市内でマンションを供給するディベロッパーの方の「建築費が高騰して、採算性が計算できる計画が見通せない」という声です。明るい兆しを指摘する言葉と、事業環境の厳しさに言及する言葉。この2つの言葉の背景にあるものは同じ、13年に入って進む〝復興工事の本格化〟です。

 『住宅市場だけを取り上げて見ても、震災が与えた、そして今もなお与え続けている大きな影響がある。復興から本当の日常に戻るには、まだまだ長い道のりが必要なんだな』2つの言葉に触れたとき、そんなことを考えました。(記者Y)