1棟リノベーションマンションの取材を続けています。新築マンションを中心に、手掛けていた会社がストック市場に本腰を入れている例がある一方、1戸単位のリノベーションを手掛けていた企業が、そのノウハウを生かして取り組む例が見られます。前者は大京グループ(「1棟リノベでブランド」住宅新報13年6月4日号)やコスモスイニシア(「1棟リノベ事業強化へ」同13年7月9日号)、穴吹興産(「1棟リノベ事業に参入 穴吹興産」同13年8月13日号)などですね。後者はグローバルベイス(「1棟リノベを積極化」同13年2月19日号)などが当てはまるでしょうか。
なぜ取り組むのか、そして、マンションデベとリノベーションに特化してきた事業者との商品性に違いはあるのか。1棟リノベ用の既存物件取得競争の動向はどうかなどなど、この辺りをヒアリングしています。
記事にまとめるのは9月になる見通しなので、楽しみにしてくださいというところなのですが、特に新築事業を手掛けていた事業者から、1棟リノベに取り組む動機として、1つ統一的な声が聞かれ、自分自身、過去の仕事を思い出しました。その声とは「政府の中古住宅ストックに対する取り組みが加速してきたから」というものです。
策定から1年半で政策顕在化
政府は10年6月に新成長戦略をまとめました。その中の目標の一つとして「中古・リフォーム市場規模の倍増」が掲げられました。それを受けた、国土交通省は、市場規模倍増を実現するための具体的な施策を盛り込んだ「中古住宅・リフォームトータルプラン」をまとめました。12年3月のことです。
私は有識者による検討を通じて、トータルプラン案がまとまった頃、そのプランに対する事業者の反応を聞きつつ、内容を紹介する形の連載を行いました。「中古倍増プランを読む(同12年3月13日号〜5月22日号)」として5回でまとめています。瑕疵(かし)保険普及への方策、宅建業者を中心に流通関連産業と連携を進める地域協議会の狙い、優良中古住宅認定制度の可能性などに触れています。
それから1年超経過した今、感じるのはトータルプランで触れられた内容について、具体化もしくは議論の本格化が見られているということです。瑕疵保険は商品改善が進み(「少額短期の瑕疵保険誕生」同13年8月13日号)、協議会は2年目の活動に入っている(「中古流通14協議会が始動」同13年8月13日号)。それから、中古住宅の優良住宅制度は検討が本格化(「既存住宅を長期優良化」同13年8月20日号)しています。
トータルプランがまとまって、それを基に政策が進捗するのは当然ではありますが、今一度、国交省のサイトからトータルプランにアクセスするのも良いかもしれません。何が進んでいて何が進んでいないのか、また、近い将来見えてくるかもしれない住宅政策の姿を予想することができるかもしれません。(記者Y)