【取材協力】
株式会社 JON 取締役営業本部長
眞木 仁(さなぎ じん)氏
株式会社 JON
行政情報を有効活用することの社会的気運が高まるなか、各種データベースの汎用型候補キーとなり得る「所在地番」および「住所」の全国レベルにおける調査体制を確立したほか、不動産登記にかかる高度かつクリーンな分析を可能とする「登記基本情報データベース」の開発に成功するなど、数々のユニークな実績を生み出している。
これらの成果が諸方面に導入されることで、不動産にかかる権利の明確化や取引の安全はもちろんのこと、社会生活における様々な利便や安心につながるものと確信し、さらに新たな事業・サービスの提供に努めている。
<第4回>より効率的な使い方
「7年目のジンクス」に照準
登記情報の活用により、不動産会社はより多くのビジネスチャンスをつかむことができるようになった。不動産登記情報コンサル会社のJОN(東京・飯田橋)では、不動産会社に提供する登記情報に「地図表示機能」をつけている。地番の緯度経度情報を保有している同社ならではのサービスだ。登記情報から地図表示のためのボタンを押すと、グーグルマップ上にその物件の場所がバルーン表示される仕組みで(図)、駅からのおおよその距離、周囲に便利な商業施設はあるか、小・中学校までの距離はどれくらいかなど、地図表示機能を活用することで確認できるようになっている。
営業物件を絞り込む
今年3月に東京都世田谷区で相続のあった「土地」の登記情報をJONに依頼すると、提供される数は536件に上る。そのすべてにDM発送するのも一つの営業手法だが、この地図情報の活用により営業したい物件を先に絞り込めるため、より効率的な活動ができると言える。
「地図機能と登記情報を活用して登記があった場所を確認し、登記情報からその場所に住んでいる人の年齢層や年収、その地域の環境などを想定することができる。あらゆる登記情報から、その地域を深く読み解くことでマーケティングとしての活用が可能」と話すのは、JON取締役営業本部長の眞木仁氏。例えば通常の「中古売買」のエンドユーザーに対しても、このマーケティング活用によるアプローチができるという。「登記をじっくり眺めると、一定の相関関係が浮かび上がる」(眞木氏)。ここでいう相関関係とは、抵当権設定登記はおおよそ7年のスパンで次の山を迎えるというものだ(グラフ参照)。
売り時期を予測
分かりやすく説明すれば、ある時期に抵当権設定、すなわち金融機関からの借り入れによる不動産の購入が行われた場合、その7年前後に売買登記が多く見られるというのだ。これは、不動産を購入した人が何らかの事情によりその物件を売りに出し、別の人が購入したことを示している。
この考え方によれば、7年前に不動産を購入した人に対してDMなどで物件売却の案内を送れば、「売り依頼」を獲得できる可能性が高まることになる。「ローンを借り換えした人は一旦リセットされているので難しいかもしれないが、その事実も登記に示される。登記を見て、『7年目のジンクス』に当てはまる人をターゲットにする価値は高い」(同氏)。
登記情報からある仮説を立て、実践し結果を求めていく。登記情報は、マーケティングの一つのツールなのかもしれない。