■なぜこのような持ち主のわからない土地が生まれたのか?
不動産登記法上、所有権の登記は任意であるが、表題登記は義務である(不動産登記法第36条)。ところが、「旧土地台帳制度」下における所有者欄の氏名・住所の変則的な記載が、昭和35年以降の「土地台帳」と「不動産登記簿」との一元化作業後も引き継がれたことにより、問題が生じた。
引き継ぎの過程で、権利部の記載がない、表題部が不明な「変則型登記」の土地が残ってしまったのだ。この表題部所有者不明土地は、所有者不明土地の中でも特に所有者の発見が困難であるため、今回の法律案では様々な措置等を講じられるようになっている。
(*変則型登記とは、例えば表題部所有者の名前だけが記載されている、所有者代表者外4名等の記載しかないなど。)
■今回の法律案が土地活用の未来を変える!?
法律案の内容をざっくりとまとめると、以下のようになる。
- 法務局の登記官に所有者の探索に必要な調査権限を付与し、土地の占有者や関係地方公共団体等の関係者から、各種台帳情報等の提供を求めることができる。
- 「所有者等探索委員制度」を創設し、必要な知識・経験を有する者から任命される委員に、必要な調査を行わせ登記官の調査を補充させる。
- 登記官は、現在の表題部所有者の登記を抹消し、所有者探索の結果を新たに表題部に登記しなければならない(所有者を特定することができなくても、その旨を登記する)。
- 登記官が探索を行ってもなお所有者を特定することができなかった土地(所有者特定不能土地)について、 新たな財産管理制度(裁判所の選任した管理者による管理)を創設し、この管理者が土地を処分(売却)することができるようにする。
なお、所有者不明土地の探索と探索結果の登記については、法律公布後6カ月以内、新たな財産管理制度については、同1年6月以内に施行される。
注目は、やはり「新たな財産管理制度」であろう。法律案が順調に成立すれば、2021年以降のそう遅くない時期に、変則型登記の所有者不明土地が市場に出回ることが予想される。
今回の法律案は、所有者不明土地のうち「変則型登記」についての対応であったが、今後も民法、不動産登記法の改正など様々な方策が講じられることが予定される。空き家と同様、こうした土地の活用法もまた、日本全体の問題として今後も注目を集めそうだ。
(参照:所有者不明土地がいよいよ市場へ!? 政府が「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案」を国会に提出!!)
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