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記者が解説 住宅新報web週刊ニュース記事(7月8日~7月14日)

Pick Up!

  • 6月の首都圏新築戸建て平均価格は2カ月連続下落の4714万円
  • 三井不がトヨタオートモールの全株式取得へ、商業施設の連携で事業強化狙う
  • 新築住宅の長期優良認定、性能表示制度活用の割合が過去最高更新

 1週間のランキング・トップ10から記者が気になる記事を3つピックアップしていきます。

 初めに、3位となった「東京カンテイ調べ 6月、首都圏の新築戸建て価格は4714万円(2025/7/11配信)」をご紹介します。首都圏(1都3県)平均で見ると、新築戸建て住宅の価格はやや落ち着いている印象です。しかしエリア別では、ある程度の濃淡も見られました。東京都は2カ月ぶりに上昇に転じており、特に東京23区は12.8%プラスと大幅に上昇。前月の2桁マイナスからの反動もありますが、間を置かずに前々月に近い水準に戻った点から、価格高騰の中でも、23区では引き続きマンションだけでなく戸建て住宅の需要も底堅い様子が見て取れます。他方、都下はマイナスが継続。神奈川県と埼玉県もマイナスながら、千葉県はプラスが続き、集計開始以来の最高価格を更新しました。主要都市別でもエリアにより動向は分かれていますが、23区外の首都圏郊外マーケットとして見る限り、主要顧客層の購買力限界を踏まえた価格の平準化が進んでいる様子もうかがえました。戸建て供給事業者にとっては、今後も価格設定の見極めに神経を使う市場動向が続きそうです。

 次は、6位の「三井不動産が8月末にトヨタオートモールの全株式を取得(2025/7/9配信)」です。三井不が、トヨタ自動車グループであるトヨタオートモール(TAC)の全株式を8月29日付で取得することで合意したというニュースです。TACの特徴は、商業施設に自動車販売店を併設し、「買い物のついでに、気軽にクルマの検討やメンテナンスができる」というコンセプトで展開する〝オートモール〟事業。株式取得と同時に、三井不とトヨタ不動産が取得する2商業施設は、いずれもそうした併設型の大型商業施設です。「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」等で商業施設事業にも定評のある三井不ですが、TACの施設に加え、自動車販売店やモビリティの知見も生かした連携により、更なる事業の強化につなげていく狙いです。消費性向の多様化の進む現代において、こうした独自の個性や強みを生かした連携と差別化は、商業施設だけでなく様々な事業領域において、今後一層重視されていくのではないでしょうか。

 最後は、7位の「長期優良認定17%、設計性能評価34%でいずれも過去最高 国交省(2025/7/10配信)」です。24年度の新設住宅着工戸数に占める、「長期優良住宅認定」「住宅性能表示制度活用」の各状況を、国土交通省が集計、公表しました。長期優良については、戸建てが比較的大きく伸び、全体の約4割に達しました。共同住宅は約2%で引き続き割合は限定的ながら、こちらも伸長して双方とも過去最高を更新しています。性能表示制度を見ても、設計住宅性能評価書の交付割合が9年連続で過去最高となりました。長期優良、性能表示制度のいずれにも言えることですが、背景としては税制特例や補助金、住宅ローン金利優遇、地震保険料の割引などの影響が大きいと考えられます。もちろん、住宅の安全性や快適性、資産価値等の向上も重要なポイントですが、それらと追加コストを天秤にかけた上で、税制特例など直接的な金銭的メリットが住宅取得者の背中を押していることは確かでしょう。現在は住宅価格の高騰が著しいため、そうした側面は以前にも増して強くなっているのではないでしょうか。理想を言えば、行政の支援策等がなくとも、住宅取得検討者が長期優良や性能表示そのものに価値を感じ、選んでくれることが最も望ましいのかもしれませんが、現実的には当面難しそうです。とはいえ、特に行政には、今回の集計結果も含め、エビデンスに基づいた支援メニューの継続的見直しを今後も心掛けてもらいたいところです。

 

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