不動産協会はこのほど、15年10月実施予定の消費税率10%への引き上げ時に導入されることになっている軽減税率制度について、住宅取得には5%などの特恵的措置を要望することを決めた。他の住宅・不動産業界団体にも連携を呼び掛ける。
国民の住生活向上と、良質な住宅ストック形成が叫ばれている今日、政府・与党は要望を真摯に受け止め、今こそ「住まいとは何か」の議論を深め、国民総意の下での実現を図るべきである。
業界が先頭に立つ
15年度与党税制大綱に盛り込むためには、年末までに結論を得なければならず、国民的コンセンサスを得るための期間として十分とはいえない。しかし、住宅・不動産業界が本腰を入れ、議論の先頭に立つ覚悟を示せば不可能ではない。と同時に、まずは業界が住宅の社会インフラとしての今日的意義と、少子高齢化など激変する社会構造の中で果たすべき公共財としての役割について、明確な認識を共有しなければならない。
もちろん、本来ならば理論重視であるべき税制が、実態的には極めて政治的・経済的力関係のもとに決断されてきているものであることは十分承知している。しかし、今後国民の住宅取得能力に大きな影響を与えていくことになる住宅消費税に関しては、今こそ従来型の政治力学に頼るのではなく、正々堂々と公正で簡潔な理論、国民の多くが納得できる理論武装を構築すべきである。
というのも、実は業界は89年の消費税スタート時には、住宅消費税に対する議論を十分尽くしていない。なぜなら当時は80年代後半の地価高騰問題と、地価抑制策として打ち出された超短期重課制度、監視区域制度、土地増価税構想(地価税)などへの対応に追われ、結果としてはさしたる抵抗もなく、3%の原則課税を受け入れてしまったからである。
もう一つ重要な点は、今回は06年に施行の住生活基本法を踏まえた議論がなされなければならないことだ。同法10条には「政府は住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を実施するために必要な法制上、財政上又は金融上の措置を講じなければならない」とある。住宅に課する消費税をどうするかは、まさにここで言う「法制上の措置」となる。
住生活基本法が根拠に
一方、住宅消費税の議論で忘れてならないのは賃貸住宅である。住宅取得に対し軽減税率を要望するとき、「住宅が高額だから」というだけでは論拠としては弱い。 住宅そのものが果たすべき社会インフラとしての機能を強調するのであれば、賃貸住宅も同様であろう。現在、住宅家賃は非課税であるが、持ち家取得と同様の措置を求めてこそ、理論としての整合性は高まるはずだ。