夫婦別姓を認めない規定と女性の再婚禁止期間を定めた規定の合憲性を争う裁判で最高裁がいずれも大法廷に回付した。審理は15人の裁判官全員で行われる。最高裁はこのところ民法での憲法判断について前向きだ。非嫡出子の相続分が嫡出子の半分という規定が違憲とされたのも記憶に新しい。国民に重大な影響を与える事件をしっかりと判断する姿勢は共感する。
▼特に夫婦別姓については96年に選択制夫婦別姓制度が答申されているのだが、国会の動きは鈍い。保守的な考え方の人が「家制度が破壊する」「別姓にすると夫婦の結合力が小さくなり、離婚が増える」などと主張している。
▼その主張の是非はどうあれ、その人たちが忘れているのか、あえて触れないのか不明だが、法制審議会の答申は「選択性」だ。婚姻する人に同姓か別姓かを判断してもらい、同姓の人はこれまで通りだし、別姓にしたい人はする。だれも、別姓を強制されるわけでも、同姓を強制されるわけでもない。なぜ強硬に反対するのか疑問だ。
▼ちなみに、安倍内閣には、選択的夫婦別姓制度に反対しながら旧姓を使用している大臣がいる。議員では認められているからだが、世間には会社での呼称などで旧姓を使えない人もいる。政治家なら、自分のことだけではなく、困っている人の身になって政(まつりごと)を行うべきと思うのだが。