政策

社説 地方創生待ったなし 格差放置すれば日本全体が衰退

 「東京一極集中」の是正が国の方針として正式に決定された(まち・ひと・しごと創生長期ビジョン14年12月)にもかかわらず、肝心の国民が本気にしていないフシがある。20年の東京オリンピック開催を背景にインフラ整備が加速している状況を考えればそれも無理からぬところか。

諦めムードでいいのか

 「地方創生」にしても「どうせ税金のバラマキ」だとか、「地方には仕事がないのだからどうしようもない」など諦めムードが蔓延している。では、このまま放置していていいのだろうか。

 何も手を打たなければ東京に人・金・仕事・情報などあらゆるものが集中し続け、東京と地方との経済格差は広がる一方だ。東京都の面積は日本全体のわずか0.5%だが、そこに全人口の10%が暮らしている。首都圏の1都3県だけで日本のGDPの2割弱を稼いでいる。

 不動産経済研究所の調査によれば、昨年首都圏で分譲されたマンションの平均価格が5060万円となり92年以来の大台乗せとなった。サラリーマンの平均年収の10倍を優に超える。庶民には手が届きにくい価格となってしまっているのも、東京一極集中のせいであろう。

東京集中が少子化加速

 〝地方消滅〟で注目を集めた日本創生会議(座長=増田寛也元総務相)は、地方衰退の原因として若者の東京への流出を指摘した。 「地方が育てた人材を東京が奪っている」とまでは言えないにしても、東京の繁栄が地方の犠牲の上に成り立っていることは間違いないだろう。

 日本人は個人間の所得格差には批判の目を向けるが(非正規社員増大や金持ち優遇批判など)、東京と地方の格差にはどうしてこうも寛大なのだろう。

 日本創生会議の報告は、人口減少と若者の東京集中とを関連づけた点でも注目された。つまり20~30代女性が、合計特殊出生率が1.13と際立って低い東京に流入すれば、当然少子化が加速する。例えば東京の女性の未婚率は42%と日本一高く、出生率は1.09と低い。このままいけば地方は若者がいなくなることで衰退を続けるが、東京も少子化が進み、一方では介護施設に入りきれない高齢者が行き場を失う。

 今回の地方創生は国も本気だ。地方にとっても再生を図る最後のチャンスになるかもしれない。むしろ問題は個人や民間企業の危機意識が足りないことだと思う。まして不動産業は人の暮らしの基本となる住まいや働く場を提供している。地方創生を積極的に担い、日本を元気にする産業として強いリーダーシップを発揮してもらいたい。