住宅・不動産企業の中間決算(3月期末の第2四半期決算)がまとまった。不動産企業は、オフィスの大量供給が進む中でも旺盛な需要に支えられ、通期業績予想では過去最高水準を見込む企業が相次いだ。また、分譲マンションは企業間のバラツキがあるものの通期では予想通りの業績、ワンルームなど収益不動産販売を主力とする企業もおおむね堅調な業績を見込んでいる。更に、大手住宅メーカーの中間決算に目を移しても好業績が目立つ。前期の受注残が今期業績に寄与し、通期も増収増益を見込む企業が多い。住宅・不動産企業の業績は極めて良好と言える。
一方で、先行きに関しては以前にも増して不透明感が漂っている。オフィス需要も来年のオリンピック後に一度落ち込むと予想されている。その後回復するとの期待が大方の見方だが、米中貿易戦争など世界景気の先行き不安として依然くすぶっている。また、今中間期に目を移しても、製造業の業績は経常利益で2割近く下落した。企業の積極的な採用が旺盛なオフィス需要の一因となっているだけに、不動産業界からも今後の国内経済の先行きや金利動向を注視する声が出始めている。
住宅に目を移しても先行き不透明感が漂う。マンション適地は不足しており、供給が滞る可能性がある。10月のマンション供給量は台風の影響が大きかったとは言え、過去最低水準に落ち込んだ。注文住宅については、政府の対策もあり駆け込みと反動減は小さかったものの、住宅展示場来場者数の落ち込みなどで需要の冷え込みが懸念されている。賃貸住宅は、消費増税後の受注の反動減や金融機関の融資態度硬化などで、以前のような成長を見込める状況にはない。
住宅・不動産の先行き不透明感を払拭するには、実需を支える政策を打ち出すことだろう。具体的には、働き方改革を中小企業にまでしっかりと根付かせ、働く環境改善につながるオフィスの拡大需要を深掘りする。また、ワーケーションなど新たな働き方を支援し、地方への効果波及も狙う。住宅については、将来の優良なストックとなる新築を支援することが大前提。パワーカップルなど資力があるユーザーは、価値があるものにお金を掛ける。住宅ストックの循環には、リフォームやリノベーションだけでは追いつかず、優良なストックを増やすことが不可欠となる。そのための支援税制や予算を検討すべきではないか。
住宅・不動産業界は、税制・予算において事業用資産の買換え特例延長や低未利用地特例、ZEH補助の改善などを政府・与党に要望していた。与党の税制改正大綱は近く公表され、その後には20年度予算案がまとまる。これらの内容をしっかりと見極め、オリンピックイヤーに住宅・不動産市場の今後のあるべき姿を官民一体で議論するきっかけとすべきではないだろうか。