主要不動産企業の21年3月期第2四半期決算は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響を受け、多くの企業で減収減益となった。ホテルの稼働率低下や商業施設のテナントに対する賃料減免などが主な要因。一方、自粛が解除された7~9月にマンション販売が急回復し、「ほぼ通常に戻った」(住友不動産)との評価が主流となった。また、テレワークの普及で、契約解除の増加が懸念されたオフィスビルについても賃料増額改定や新規供給オフィスで満床稼働となるなど、底堅さを見せている。(4面に関連記事)
大手5社のすべてで売上高が減少。第1四半期(4~6月)中は、新型コロナウイルスの影響により、マンション販売拠点の休止や商業施設やホテルが営業停止となった。「商業施設の賃料減免が大きな減収要因」(三菱地所)となり、今上半期の業績悪化の主な要因となった。
第2四半期(7~9月)は、各社ともオフィスビルの賃料収入が堅調。住宅事業もマンション販売拠点の再開と共に、来場者が増加した。大手5社のいずれも、オフィスビルの空室率も低水準で推移し、マンション契約率も計画を上回り、請負受注も回復した。
大手5社中2社が純利益で増加となったが、「オンライン接客などである程度、来場制限を補っている」(三菱地所)、「既存ビルの7割が賃料増額改定に応じ、新築オフィスも入居率100%」(住友不動産)など、主力事業が収益を支える構造を裏付ける。
一方で、ホテルやフィットネスクラブ、商業施設は、回復が遅れている。営業休止明け後も商業施設のテナント賃料が減少。また、ホテルは政府のGOTOキャンペーンで稼働率の下支えがされているものの、「ホテルは都心部に多く、ビジネス客が中心で回復が遅れている」(住友不動産)と言う。フィットネスクラブも感染症対策を行いながらであることから、稼働率を大きく上げることが難しく、オンラインレッスンなどの取り組みはまだ業績には反映していない。
通期の業績予想に関しても、オフィス事業や住宅事業は好業績を維持すると予想する。マンションの契約進ちょく率も高く、「早期に不動産市場が戻ってきた」(三井不動産)と評価し、物件売却も予定通り実施できるとしている。こうしたことから、業績予想についても上方修正した企業は、5社中3社、横ばいが1社だったが、それでも5社すべてが減益予想となっている。
個人投資マインド根強く、減税や低金利カギに
ワンルームマンションなど収益不動産販売を主力とするディベロッパーでも減収減益が目立った。エフ・ジェー・ネクストは緊急事態宣言発令で営業活動を一時自粛したことなどが響いた。ただ、新築を中心に販売状況は回復基調にあるという。プレサンスコーポレーションは増収減益。
プロパティエージェントは前年同期に大型の事業者向け取引があったため減収減益となったが、その特殊要因を除くと前年同期を上回る販売状況。コロナ流行前からオンライン商談など社内体制を整備していたことも、非対面が求められる中では大きな後押しとなった。個人の資産形成への関心は高く、投資マインドの強さは今後も続くと見ている。
しかし、今後の見通しについては不透明感もある。各企業の業績を支えるオフィスビルと住宅も来期以降も盤石とは言いきれない。オフィスビルに関しては、在宅勤務の進展によるオフィス需要が変化し、都心部での空室率のアップが指摘されている。ただ、空室率に関しては、これまでがかつてないほど低水準だったことなどから5%程度は許容範囲とする不動産会社もある。一方で、「今後の景気動向について注視する必要がある」(三井不動産)など、景気悪化によるオフィス需要減退に対する警戒感が出始めている。
住宅については、雇用環境の悪化による購買力低下もあるが、「減税や低金利が続けば、今の状況はもうしばらく続く」(住友不動産)との声もある。