例年、この時期には1年を振り返る企画が各メディアで行われる。今年の漢字も先日発表されたが、予想された通り新型コロナウイルス感染症の影響を表した「密」だった。この20年という年は、新型コロナに明け暮れた1年だったと後世に刻み込まれるだろう。
1月16日、日本で初めてWHOに対して新型コロナの症例発生が報告されて以来、政府は正式に認めていないが、3つの波に襲われ、19万人を超える感染者(12月17日現在)を出してしまった。これが、すべての産業に甚大な影響を及ぼし、多くの企業・商店が廃業した。
本紙も本日付けの1面で重大ニュースを取り上げたが、11本のニュースのうち、8本が新型コロナ関連だ。「緊急事態宣言による住宅営業拠点の休止」といった直接的な影響もあれば、「非対面化が進む(オンライン商談、IT重説など)」といった、従来から進んでいたものが更に加速化した影響もあった。新型コロナの甚大なインパクトに対し、何とか抗い、対応していく人類の知恵は見えるものの、真に効果的な対策(特効薬、ワクチンなど)はまだ緒に就いたばかりで、21年も引き続き、新型コロナとの綱引きが続くだろう。
こうした中、注目されるのが、ニューノーマルに対応した業界の動きだ。4月の緊急事態宣言発出から、外出自粛要請などもあり、通常の通勤スタイルからテレワーク体制をとる企業が多くなった。それに対応し、テレワーク対応住宅の販売も盛んになる。ワークスペースとして個室、半個室などを盛り込んだもの、複数の在宅勤務スペースを提案する傾向や玄関部分に手洗い・消毒設備を設けるなど、新型コロナに積極的に対応するものだ。
また、仕事・働き方の変化に対応したものもある。新築マンションでは、個室ブース付きのリモートワークスペース、Wi-Fiやモニターなどを設置したオンラインフィットネスが可能なパーソナルスタジオなどコワーキングスペースを用意。テレワークでありながら、居心地のよい空間の提案などを行っている。そして、二地域居住によるワーケーションなど新たな動きも見られた。
新型コロナにどうしても目を奪われがちだが、本来ならもっと注目されたのが、「改正民法の施行」だろう。契約不適合責任の導入、賃貸借の規定化、保証の大改正などいずれも住宅・不動産業界に大きく影響を与えるものだった。しかし、コロナ対策に翻弄され、売買・賃貸契約数も減ったため、改正民法どころではなかったというのが、正直なところだ。今後、ワクチン開発が進み、何とかコロナが落ち着けば、新法による影響など積み残した課題を解決する局面が来るだろう。21年は、そうした様々な課題を共有化し、局面を打開するために、業界人こぞって前進する年にしたい。