リクルート住まいカンパニーが実施した、20年首都圏における「住まいの売却検討者&実施者」調査によると、売却完了の割合はコロナ禍以降から検討を開始した人のほうが高く、売却実施者は売却に有利な時期と感じていることが分かった。同社「スーモ」編集長の池本洋一氏(写真)は「売却実施者は、コロナ禍は売却に有利な時期だと感じている一方、外部との接触を避けることなどを理由に売却を思いとどまる人も一定数いた」とし、買い需要の好調さから売り時は継続していると指摘する。
同調査は、同社が初めて「売却」に特化し、売却物件が不足する住宅市場の実際の意識と行動を把握するためのもの。売却検討者の出現率を四半期ごとに比較すると、20年の1~3月は5.6%(前年四半期対比0.7ポイント減)、4~6月は5.6%(同0.5ポイント減)、7~9月は5.3%(同0.4ポイント減)、10~12月は4.9%(同0.5ポイント減)で、いずれの時期も前年より減少し、売却の検討意欲が減少していることが分かる。
コロナ感染拡大の売却への影響を見ると、コロナ禍以降(20年4月以降)から検討を開始した人の売却完了率(実際に売却した人の割合)は56.4%で、3月以前に検討を開始した人(43.1%)を上回った。一方、売却未完了者(N=221)の内訳を見ると、コロナ禍を機に検討が「促進」(情報収集の開始や媒介契約の後押しなど)されている人の割合が6割超を占め、「休止」(売却の休止や検討中止など)の3割を大きく上回った。ただし、このうちの買い替え検討層(N=116)では休止者が4割と多くなり、「抑制の理由の中には『コロナ禍で外部との接触を避けたかった』がある。二次取得検討者は60代以上が3割と年齢が高い傾向があり、この層が感染抑止を判断した影響が見られる」(池本氏)。
売却検討の時期については、最多の「買いたい人が増えていそうだから」などを理由に、全体の約38%が有利と感じていたと回答し、不利と感じていた人の割合(22.1%)を約16ポイント上回った。更に、売却完了者(N=193)に限ると、半数以上の51.3%がタイミング的に有利と評価した。また、売却実施における満足度は10点満点中で平均7.5点。コロナ禍以降(4月以降)に検討を開始した人では7.6点(20年3月以前の人は7.4点)となり、売却価格や成約スピードなどを含めて売却完了者の満足度の高さがうかがえる。
媒介獲得の接点強化へ
池本氏は60代以上が所有する郊外ニュータウンやバス便物件はコロナ禍で注目度が高まる今こそ絶好の売り時とした上で、「住み替え先として駅前タワーマンションが好調という声も聞く。不動産会社はチラシやウェブ広告で郊外の戸建て売却が好調な実績をきちんと示し、強化することで売却の媒介獲得につながるのではないか」としている。
同調査は20年12月、首都圏在住の20~60代を対象にインターネットで実施。過去1年以内に居住用不動産の売却を主体的に検討した621人が集計対象。