「五輪はバブルの中で行われるから安全だ」。政府や組織委などの重鎮から聞かれる言葉に、いつも不安を感じていたのは当方だけだろうか。年代から、バブルというとどうしても80年代後半を思い出す。日本中が熱狂し、そして日本中がうなだれたバブル崩壊。その記憶から、選手らを包んで守るバブルは怪しいと思うのだろうか。
▼はたして、その直感は当たってしまう。ウガンダから東京五輪の事前合宿のためにきた選手団のうち、一人が新型コロナウイルス感染症の陽性者となった。その人を施設に入れた後、残りの選手たちを貸し切りバスに乗せ、迎えに来た市の職員と運転手と共に事前合宿地の大阪・泉佐野市に向かう。はて、飛行機で陽性者と一緒だった選手団は「濃厚接触者」ではないのか。そう、バブルの中に入っていたはずの泉佐野市までいく道程は、すでにバブルが弾けた無防備な世界への道になってしまった。遅ればせながら、市職員と運転手を含めた選手団一行は「濃厚接触者」と認定され、そして、更に一人が陽性者となった。
▼あとひと月足らずで、東京五輪パラリンピックは開かれる。ウガンダの2人の新型コロナは、感染力が従来より2倍近い「デルタ型」だった。この件以外に、新型コロナウイルスの感染が確認された選手らが4人いることも分かった。バブルはきっと弾ける。とうてい晴れやかに五輪を迎えることはできない。