新型コロナウイルスによる感染拡大は未だ終息の兆しが見えない。しかし、いずれその時は来る。終息までの期間が長くなればなるほど、そこから学ぶべきことは多く深くもなる。だからこそ、その時をただ漫然と待っていることはできない。
コロナ禍で加速した働き方改革、それに伴う住まい方改革と最も密接に関わっているのが我が業界である。それだけに、コロナ後の社会にどう対応すべきかを真剣に、かつ鋭く感じ取り、その心構えをしておく必要がある。そこで本紙は業界がコロナ後に志向すべき方向性について3つの視点を提示する。
1つ目は「不確実な時代への対応」である。今回のコロナ・パンデミックはそれ以前から頻発していた大規模な自然災害と相まって、人々の心に「いよいよ何が起きるか分からない時代になった」という不安を色濃く残すことになった。生活の基盤である住宅が水に浸かり、あるいは押し流されていく無残な光景はその象徴でもある。しかし不安な時代だからこそ、家族の城としての住宅取得に対するニーズは強まっていく。ただ、コロナ終息までの期間がこれ以上長引き、所得不安が増し、自然災害との二重被害なども増えれば、住宅取得への漠とした不安が人々の心に付着することになったとしても不思議ではない。そのような漠とした不安は、防菌・防災対策など個々の具体策を並べるだけでは払拭できない。最後は我が業界が最も深い意味でのコンプライアンスを確立し、国民との間に真の信頼感を築くことができるかどうかにかかっている。
2つ目は「住宅・不動産市場の活性化は価値観の多様化を業界が積極的に推し進めてこそ達成できる」という信念をもつことである。コロナを機に、働き方や住まい方、ライフスタイルをめぐる価値観の多様化が進んでいる。都心居住だけでなく郊外や地方での暮らし、リモートワーク中心の働き方など価値観の多様化こそが不動産への投資や需要を拡大し市場を活発化させる。とすれば、業界としてはそうした価値観の新たな胎動に対し冷笑や様子見ではなく、率先してサポートする姿勢を持たなければならない。
3つ目は「金融、保険、法務・税務、建築など関連する業界との密なる連携」である。なぜなら、日本の未来を覆う人口減少、少子・超高齢化、年金不安などの課題はどれ一つとっても住宅・不動産業界の力だけで解決できるものはないからである。例えば働き方が大きく変化し、終身雇用・年功序列の賃金体系が崩れたとき、長期の住宅ローン返済を担保する方法をどうするのか。金融や保険業界との連携が欠かせない。つまり、山積する課題を解決し日本の未来を明るく照らす光があるとすれば、それは業界の枠を超えた企業同士の連携と創意工夫しかないのである。