日本賃貸住宅管理協会(塩見紀昭会長)は1月20日、配偶者の転勤や親の介護などで遠方に転居した後も管理業界で働き続けたい人と、経験豊富な人材を確保したい企業をつなぐ「人財ネットワーク制度」を始めた。同制度は、同協会の女性部会であるレディース委員会の発案で実現したもの。同制度に登録した同協会会員同士が利用でき、再就職希望者は、所属企業を通じて次の就職先の紹介を受ける。
利用に当たり、費用は掛からず、性別や年齢に制限はない。雇用形態も正規・非正規を問わない。経験を積んだ人材が働き続けることができれば、業界の更なる発展につながると期待が集まる。
同委員会の濱村美和委員長(不動産中央情報センター社長)は制度創設の背景として、「不動産は幅広い知識と経験値が求められ、また、女性の安心感やきめ細やかさ、口コミ力は重要な競争力。男女問わず結婚や育児、介護等の人生経験もお客様への幅広い提案へつながる」と業界ならではの理由を話す。
87%が「継続して働きたい」
更に、同委員会が11年に実施した「賃貸管理業界で働く女性の意識調査報告書」では、不動産業界で働くことに魅力を感じている人が76%、今後も継続して働きたいと回答した人が87%に上り、仕事にやりがいを感じている人が多いことが分かった。一方、「働く女性の就労環境調査レポート」(18年)では、女性の70%が勤続10年以内に辞めているという結果が出ており、その主な理由は「結婚、出産、繁忙期、休みがとりづらい」などだったという。
「仕事にやりがいを感じながら長く続けられない理由のひとつが働く環境の整備であるならば、協会活動を通じて何らかのサポートができないかと考えていた。また、人手不足(採用募集をしてもなかなか人が集まらない)の話もよく耳にしており、地銀の人材バンク制度を知ったときに賃貸住宅管理業界でもその仕組みが導入できるのではないかと考えた」(濱村委員長)。
21年6月には賃貸住宅管理業法が全面施行された。「安定した適切な管理業務の実現には経験値のある人材確保は大切。業界内のスキルシェアといった観点からもこの制度を活用してもらうことを期待している」(同)。