不動産テックに専門特化した最新技術やサービスを紹介するメディア『不動産テック・BIZ』(運営=住宅新報)は、『2022年不動産実務はどう変わる?』と題し、リアルとウェブによるハイブリッドセミナーを1月27日に不動産テック企業など各社と共催・協力した。不動産テックを活用した実務上のポイントなどを解説し、不動産業務の〝デジタル化〟を展望した。
国土交通省不動産業課長の井崎信也氏は、不動産取引のデジタル整備について、「デジタル化のニーズが高まり、改正宅建業法で書面の電子化を認め、宅建士の押印を廃止する。遠隔地間の取引が容易になり、安全性を確保し、業務の効率化に期待できる。住まいや働き方の変化に的確に対応し、消費者サービスを提供してほしい」と解説した。
顧客満足と市場拡大
WealthPark(東京都渋谷区)SaaS事業部営業の浮田一浩氏は、デジタル活用によるオーナーとの関係構築の新たな姿について、「オーナーアプリの活用で情報の共有やコミュニケーションを改善でき、トラブルを防げる。不動産管理会社のコスト削減や業務効率化だけでなく、拡張機能と合わせて顧客満足を高め、素晴らしい〝体験価値〟を提供し、管理戸数の増加などの業績向上にもつなげられる」と説明した。
グローシップ・パートナーズ(東京都港区)代表取締役の松井晴彦氏は、不動産クラウドファンディングの事業化のポイントと市場動向について、「不動産特定共同事業法で17年に電子取引業務が解禁され、パッケージサービスのシステムの活用は、業務管理から投資家募集まで、簡便に対応できる。投資対象はレジデンスを中心に1年未満の短期運用が多く、市場規模は右肩上がり。投資家が増え、供給が追い付かないほど好調な状況にある」と説明した。
電子契約の解禁で変わるオンライン取引について、いえらぶGROUP(東京都新宿区)商品開発本部管理商品部流通開発課課長の坂野嘉昭氏は、「すべての業務が電子化されるターニングポイントになる」と強調。弁護士ドットコム(東京都港区)パートナーセールス兼パートナーデベロップメントチームマネージャーの上堀晃氏は、「即日契約が可能となり、先進の取り組みで〝選ばれる〟店舗になれる」と説明した。
営業手法の改革
Housmart(東京都中央区)プロポクラウド事業セールスチームの前田ちひろ氏は、「熱い顧客」の見える化で売買仲介営業を最適化する方法について、「業者間の競争が激しく、顧客の検討期間の伸長傾向から成約しづらい状況がある。物件力に加えて、提案力などの〝質〟が問われている。中長期的に訴求する営業体制の再構築が必要になっている。顧客行動を可視化して営業活動を支援する〝MAツール〟を活用することで効率的よく、効果を出しやすくなる」と説明した。
日立ソリューションズ・クリエイト(東京都品川区)サムポローニア本部システム本部第2グループ技師の森山紘次氏は、登記簿の活用方法について、「登記簿情報のシステムサービスの活用は、二重取得を防ぎ、的確に収集できる。履歴管理からデータの抽出・分析が可能となる。不動産IDなどの各種データと連携させた二次利用で、リストの作成や定期訪問の事業戦略に生かせる。利便性と共に、より早く、反社チェックを含めた安心・安全な取引を実現できる」と説明した。
課題感とこれから
続くパネルディスカッションでは、不動産仲介管理業のウェーブハウス(岡山市北区)社長の市川周治氏のほか、グローシップ・パートナーズ社長の松井晴彦氏、Housmart社長の針山昌幸氏が登壇した。不動産実務の今後を各氏は、「顧客のデジタル化ニーズは一層高まり、加速していく。それにどう向き合うのか。まずは入り口に立つ。テックは〝魔法の杖〟ではないが、抱える課題を補える。仕組みを変え、目的意識を持つ。現場で使いやすい、使いこなせる環境を整備して、業界を活性化させなければならない」との要旨で展望した。