「購入後に書類が届いたがどう対応したらいいですか?」
残金決済が終わった後に顧客から連絡が来るパターンは主に次の4つがある。(1)他の顧客紹介、(2)(顧客に届いた)不動産関連書類への対応助言、(3)税金関係への対応助言、(4)トラブル発生かクレーム対応の4つだ。どれも重要ではあり、おざなりの対応をしてはいけないが、比較的軽い対応をして顧客に不満を与えてしまうのが、(2)不動産関連書類への対応助言である。顧客は書類の意味と自身への影響についてきちんとした説明を聞きたいと思っている。そこで、各書類についてどのように対応をしたら良いかを述べてみる。
不動産取引後に届く書類で質問があるのは、(ア)不動産取引のアンケート調査(国土交通省)、(イ)不動産取得税納付通知書・不動産取得申告書(市区町村役場・都道県税事務所)、(ウ)土地建物等の譲渡所得がある場合の確定申告のお知らせ(税務署)、(エ)お買いになった資産の買い入れ価額などについてのお尋ね(税務署)、この4書類だ。
まず(ア)不動産取引アンケート調査は土地鑑定委員会等が行う公示価格などに用いる取引状況や価格についてのアンケート調査だ。不動産登記をしてから1~2カ月後に買主の手元に届くことになる。
税務業務には用いないと書かれており、買主に書いていただいてもデメリットはない(公示価格に影響するので不動産業界にとってはメリットがある)と思うので、任意ではあるが書いて送付してもらおう。なお、よく書き方を聞かれるが、分かりやすい記入例が付いている。それを見て書いてもらうように案内する。
(イ)不動産取得税納付通知書ならその納税額を確かめて納付してもらい、不動産取得申告書なら記入して申告を行ってもらおう。不動産取得税は原則、不動産を取得してから納税の申告を一定期間内にしてもらうルールだが、登記と連動しているようで所有権移転登記をした場合は申告不要となることが多い。この期間と登記をした場合の対応は自治体により異なるので確認をしてみて、申告不要なら納付通知書が来たら納税するように案内をしておきたい。ただし、軽減措置が利き減税となる、土地に新築住宅を建てる、居住用に中古住宅を購入する場合は申告が必要な自治体が多い。事前に確認をしておき、顧客に案内をしておこう。残り2つは税金のことなので「税理士か所轄の税務署に確認してください」と案内すればよい。ただし、(エ)のお尋ねは税務署が資金の出どころについて脱税や贈与の有無について疑義をもっていることを示す書面だ。多少なりとも心配があれば税理士に、そうでなければ直接税務署を案内したい。ウはともかく、(エ)は、私たち宅建業者は直接関与しない方が無難と言える。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。