「マンション(区分所有住戸)は管理を見て買え」とよく言われる。これは管理状況が居住環境の良好さや資産価値の維持に直結するためで、購入後の満足度に関係するためだ。ただ、マンションは一戸建てと異なり管理方針を自分一人で決めることができず、多数の同意で決めなければならない。そのため不動産取引をする際には管理方針が「管理状況をよくしていこう」と積極的なベクトルを示しているのか、「管理状況の悪化もやむを得ない」と消極的なベクトルを示しているのか、掛かる費用面も含めて現地や書面で読み取り、購入者にアドバイスしていくのが良いだろう。
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「誤ったアドバイスをして、後で顧客から違うじゃないかとクレームを入れられたらどうしよう」と心配する人も多いだろう。筆者もそう考えていた時期があるが、それでも断定的ではなく、多くの方が関わる話なので先は読めない。「現時点で」と前置きして誠意をもってアドバイスをすると顧客の多くは「購入の参考になります」とお世辞抜きに喜んでくれる。
顧客はたとえ将来アドバイスが間違っていたのではないかと感じたとしても、その時点で自身の利益につながるアドバイスを誠実にしてくれたことに対して悪意を持たないし、それ以上に購入時にはアドバイスを求めている。その琴線に触れておくことは一営業パーソンとして必須だろう。
さて、管理状態を確認できる書類の一つとして管理会社に請求し発行される「管理に係る重要事項報告書」がある。発行費用は1万~2万円を請求されることが多いが、平成10年代は数千円という管理会社も多く、前線を離れた人だと「そんなに高くなったの」と感じやすい。今の物価高とは関係なく年々上がっている。
また、平成10年代の頃は売買契約の直前に取得する書類であったが、現在は売主からの媒介契約後に取得して購入検討者の説明に利用することも多くなった。瑕疵担保責任から契約不適合責任になってからは多くの不動産会社も調査説明責任から媒介契約後の取得に切り替わっているのだろうと思う。大手管理会社なら請求をしてから3~4日後にネットで管理に係る重要事項報告書のデータが届く。郵送対応なら1週間ほどとなる。すぐには入手できる書類ではないので、時間の余裕は見ておきたい。
なお、同時に最新の管理規約と総会議事録はその分費用は掛かるが管理会社に請求して入手しておきたい。売主が最新の管理規約を持っていれば良いが、なぜか購入時のものしか所有していないことが多い。規約変更で購入者に間違った説明をするよりかは、数千円の負担はしておいた方が良いだろう。
次回は重要事項報告書の内容について触れる。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。