総合

大言小語 イチョウ並木に思うこと

 東京・神田警察通りの沿道整備において、イチョウ並木の「伐採」をめぐり、以前から千代田区と住民らが対立している。この件に関して、5月7日に阿部知子衆議院議員が政府に提出した質問主意書と、同17日の政府答弁書を読んだところ、どうにも噛み合っていない印象を受けた。実態を直接取材していない身として、個々の意見に対して何か論じる立場にはないものの、相互の対話が不十分な様子は見て取れる。主張の是非以前の問題として、それが相手に伝わっていなければ交渉も始まるまい。

 ▼行政だけでなく、都市開発を手掛けるディベロッパーも、そうならないよう地域とのコミュニケーションを強く意識しているはずだ。有意義で正当性のある事業であっても、関係者の納得なしに進めてよいものではない。他方、説明を受ける側が頑迷な場合もある。対話には双方の努力が不可欠であり、悩ましい。

 ▼いずれにせよ、「自分たちの考えだけが正しい」と、説明や傾聴をおろそかにすれば反発の種となる。ましてや対話の拒否、コミュニケーションの断絶など論外だ。逆に、漫画からの引用で恐縮だが、「納得は全てに優先する」という一部で知られた台詞もある。言葉を尽くして納得と理解を得られれば、賛同や共感とはいかずとも「落としどころ」は見付けられることが多い。元新聞記者でもあった犬養毅にならえば、「話せば分かる」とはそういうことなのだろう。