東京、大阪、名古屋の三大都市圏を起点に地価上昇が広がっている。再開発や投資家の影響を反映している。分譲マンションは普通に働く会社員が買えない水域に到達した。
▼新社会人になり賃貸住宅に住み、結婚・出産を機に分譲マンションを購入し、終の棲家を戸建て住宅でという住宅スゴロクは昔の話となった。マンションは、新築も中古も今や金融商品的要素で売り買いされている。将来の値上がり益を見越した購入であったり、過去の大恐慌やリーマン・ショックなど不測の事態に備えて現金化しやすい物件を狙うという塩梅だ。
▼住宅の地価が上りやすいのは容積率を緩和するなどの再開発がらみであり、高さ制限など開発のしにくいエリアは東京23区でも地価の上げ幅に濃淡が出る。再開発のやりやすさとやりにくさが地価に顕著に表れる時代となった。地方も同様で福岡市はその典型であり、中央区と博多区のマンションは札幌・仙台・広島と比べ別格の取引量を反映する。
▼「金利のある世界」を見据えれば、住宅市場は二極化が加速する。住宅ローンを組まずに現金買いの富裕層にとって利上げの影響はないが、一般層はそうはいかない。ペアローン、パワーカップルという流行り言葉は1人で買えない裏返しで喜ぶべきことではない。35年間でも長いのに50年、それ以上の住宅ローン商品も購買力が乏しい層に自分のリスクと購買力を錯覚させているのではないか。