今年度の宅建試験が終了した。結果に関わらず、学んだ知識を積極的に職務で生かし、自社の生産性向上に貢献してもらいたい。同時に、従業員が実力を発揮できる環境の整備も、企業にとって重要な課題だ。
▼厚生労働省の有識者会議が10月10日に公表した中間取りまとめ案では、「ストレスチェックの実施義務対象の(50人未満含む)全事業場への拡大」等を提唱しており、国が「職場のストレス対策」を強化する動きが見える。また、大きなストレッサーである〝カスハラ〟については、住宅・不動産業界でも対応の動きが表れてきた。
▼他方、〝社内のストレッサー〟に対する我が国の動きは鈍い。科学技術振興機構の学術誌「組織科学」の掲載論文「非生産的行動の悪影響は目撃者にも及ぶ」(能渡真澄・伊達洋駆、7月公開)によると、職場のいじめやハラスメントなどの「対人的な非生産的行動」は、被害者だけでなく周囲の目撃した人にもストレスを与え、バーンアウトなどを引き起こす。しかし国内ではこうした研究は少なく、関心が低い様子だ。
▼別の取材で聞いた話では、組織内の暴言は「対象者に50%、周囲で見聞きした人に20%」もの生産性低下をもたらすという。5人以上の組織であれば、暴言を吐く人間はマイナスの効果をもたらす計算で、〝いないほうが良い社員〟ということになる。企業側にはぜひ、科学的知見を踏まえた職場環境の整備を期待したい。