一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会(FRP、真鍋茂彦代表)はこのほど、不動産流通推進センターに対し、24(令和6)年度の提言を行った。
第1は、自治体が空き家活用に公認不動産コンサルティングマスターのサポートを求める場合には「〇〇市・空き家対策相談員」(仮称)といった社会貢献的呼称を用いることを要望するもの。これは国土交通省が「不動産業による空き家対策推進プログラム」の中で自治体に対し公認不動産コンサルティングマスターの積極活用を呼び掛けていることを踏まえたもの。
第2は、営業職は全員が公的資格を持つべきという理念を掲げる宅建アソシエイト制度について。現在、アソシエイト制度では第1ステップの初任従業者研修の修了者が第2ステップに進めるが、宅建マイスターによる講習会の修了者にも第2ステップ以降に進む資格を付与してもらいたいというもの。
これは宅建マイスターに宅建アソシエイトの普及活動に参加してもらうことで、マイスターの社会的役割を広めるのが狙い。その一環で、宅建士の知識、能力のブラッシュアップの機会である法定講習の講師の選定基準の中には「宅建マイスター」が明記されているが、現実にはどれくらいの宅建マイスターが任用されているかという検証をすべきという要望も盛り込まれた。
第3は、上記1、2を担保するものとしてコンサルティングマスターとマイスターの行動規範の明記である。
不動産流通業界に対する社会の信頼感が向上しない大きな原因は、営業行為に対する不信感が原因との認識のもと、彼らがどのような規範・立場に基づいて業務を行っているのかを特に依頼者に対して示すことが重要だとしている。
提言に示された具体的な行動宣言は次の通り。(1)依頼者利益のため最善を尽くし、依頼者の不利益となる行動をしない(2)真実のみを依頼者に伝え、情報の誇張や不正確な伝達、リスクや不利益情報の隠蔽をしない(3)依頼者の意思決定に必要な情報に関しては依頼者が十分納得するように説明を尽くす。
これらの宣言は業界に対する不信感を払拭してゆく先鞭として、宅建士の模範である公認不動産コンサルティングマスターおよび宅建マイスターが自らを律していくものと位置づけている。更にこれら行動規範を実効性の高いものとするための「営業実務基準」を策定する必要があるともしている。この実務基準は公認不動産コンサルティングマスター及び宅建マイスターのみならず、無資格者をも含め依頼者と対峙する全てのプレイヤーが準拠すべき基準とし、業界全体で策定し浸透させるべきものであるとも指摘している。
言葉がすべて
FRPの推進センターへの提言は毎年行われている。〝提言〟は言うまでもなく言葉で出来ている。毎年同士らと議論を重ね、確信を得た上で提言する手段は言葉をおいてほかにない。その根拠となるのが「確信」だ。個人は自分の生き方を通して確信を深めることができるが、組織は議論を重ねることでしか確信を得ることができない。
ただ、組織を構成するのは個人だから、組織として確信を得るということが本当はどういうことなのかの議論は今後も必要だろう。ちなみに、筆者の確信は「この世で最も大切なものは言葉が生み出す情緒である」ということか。
人間はだれしも確信もしくは直観がなければ行動しない。FRPという組織は発足してまだ数年で会員数もまだまだ少ない。だからこそ人間味の濃い組織という利点もある。その提言が公認不動産コンサルティングマスターと宅建マイスターという〝個人〟のあるべき行動規範に照準を合わせていることからもそれが分かる。逆に言えば両資格者の確信と直観がこの提言に書き込まれているということだ。