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大言小語 シーシュポスの神話

 経済産業省策定のDXレポートで注目された「2025年の崖」が目前に迫る。様々な機関や企業の調査では「8割の経営層が認識していない」、逆に「8割の企業が対応を進めている」など実態は分からない。

 ▼当該問題は老朽化したレガシー(遺産)なシステムの更新時期と、IT技術者不足が重なる危機的状況のことを指す。特に、数億円をかけた個社独自のスクラッチ開発システムを持つ大手企業に影響は大きいが、豊富な資金力や人材を背景に結局のところは対応できてしまう。

 ▼中小企業でも、従前システムから最新クラウドサービスへ変更が進む。そのため問題は、大手企業に吸収されるIT技術者の不足感が更に強まる点にある。リスキリングによって、社内でIT人材やDX人材を育成しなければならない。

 ▼自然な言語で最新技術を操作できる「生成AI」(人工知能)は、新年に更に活用が加速する。不動産テック協会(東京都渋谷区)が開催した講演会で、生成AI活用普及協会(GUGA)は、「する・しないではない。生成AIの導入は、ビジネスの前提になる」と強調した。

 ▼一部の企業ではITツールの導入が〝目的化〟している。DXは導入・活用・定着化で新たな顧客体験価値を創出すること。革新のテクノロジーを使いこなせないと、非常に滑りやすい坂道を上るか、シーシュポスの神話のように、大岩を何度も山頂に持ち運ぶ報われない努力が待っている。